ぷれてんどがーる!〜寝たフリをしていたら、妹の友達がメスガキのフリをやめて本音を漏らしてきた〜

ほわりと

本編

第1話 寝たフリとメスガキ

「やっほー、おにーさんっ♡」


 扉が盛大に開く音で目が覚めた。大学の課題をしていた所までは覚えているが途中から記憶が曖昧だ。ああ俺、寝落ちしたのか。昨日は遅くまでバイトしてたからなあ。まだ眠くて、つい寝返りをうつ。


「あれ? こんな時間に寝てるの?」


 子守り歌にするには煩い、生意気で明るい女の子が話しかけてくる。その声を聞いて寝ぼけていた俺の脳が覚醒する。こいつは俺の妹・カナの友達。まだ小学五年生なのに軽く化粧をしていて、見下すような態度で絡んでくる迷惑なメスガキ。


 名前はなんだったか?


 まあ、メスガキはメスガキで十分だろう。


「つまんないの。せっかく彼女のいない、おにーさんのために遊びに来てあげたのに。私だって学校の勉強とかあるんだよ? こーんなにかわいい小学生と話せるんだから、私に感謝してくれてもいいのになー」


 彼女がいないのは事実だが、小学生に言われるとムカついてしまう。俺が寝てると思って好き放題言って。全部聞こえているぞ、でも無視しているんだ。あの生意気な吊り目で煽られると、ついつい挑発に乗ってしまう。だが、それはメスガキの思う壺。ここは寝たフリでグッと我慢だ。


「あっ、そうだ。じゃーん!」


 メスガキはそう言うとゴソゴソと何かを探る音をたてた後、俺の顔の前で何かをピラピラと見せびらかした。薄っすら目を開けて確認すると、それは算数のテスト。所々に不正解があり、自慢するような点数ではなさそうだ。


「ほらほら、今日返ってきたテストで私、三十八点取ったんだ!」


 やっぱりそんな点数か。


「クスクスッ。私、知ってるんだ。おにーさんは私と同じ小学五年生の時に二十一点だったでしょ?」


 …は?


 ああ、この前部屋が探られていると思ったらメスガキの仕業だったのか。この部屋には子供に見られてはいけない『ウス=異本』や『エロホム様』が眠っている。鍵を付けるのも検討したほうがいいのかもしれない。最近はウェブサイトで購入してデータで管理しているから、紙媒体のものは近々友達にでも譲ったほうがいいかもしれない。


「ほらほら、私の方が三倍かしこーい」


 …さん…倍?


 いやいや、ちょっと待て!


 メスガキの取った算数の点数は三十八点。当時の俺が取ったらしい算数の点数は二十一点。三倍どころか二倍も差は開いていない。そのことに気づいていないのか、メスガキは生意気な笑い声で勝ち誇る。それだけでは飽き足らず、耳元でさらに煽ってきた。


「ざぁーこ♡ ざぁーこ♡ クソザコおにーさんっ♡」


 うぐぐ、ツッコミたい。「三倍も点差は開いていないだろ!」と、ツッコミたい。でも、それをすると起きていることがバレてしまう。俺は今、寝ているのだ。ここはグット我慢。


「…本当に寝てるの? なーんだ、つまんないの。またね、おにーさんっ♡」


 メスガキは飽きたのか俺の部屋から出て行った。バタンという音が聞こえると同時に緊張の糸がほぐれる。あ、これ使えるかもしれない。寝たフリをしていればメスガキが飽きて、俺に話しかけなくなるかもしれない。そうすれば、メスガキから受けるストレスから開放される。


「次も寝たフリしてみるか」

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