私の周りの『イケメン御一行様』、ついには【王子にまで溺愛されて?】虐げられてきた『大聖女』は有り余る魔力を駆使してカフェを営む~
蒼良美月
第1話・プロローグ
──はて? ここは?
見渡すと真っ白な天井と周りには小さな机とピンクのカーテン。
初めて見た光景に一瞬思考が止まる。
何故かベッドに私は横たわっている。
ゆっくり深呼吸をしてみたが、特に息苦しいこともない。
何故? 私はここに?
私は生きていたのか?
思い返せば、あの時私は「死の森」と呼ばれる森へ勇者パーティーに同行して行っていた。
そこであの……今思い出すだけでも震えが止まらない。
今まで経験したことが無いぐらいの恐怖。
あの悪夢のような恐ろしい魔物との出会い……
世界最強と言われた勇者パーティーの一人が瞬殺され恐怖に慄いた次の瞬間には、呆気なく無残に次々と……
必死で回復を試みるが、一瞬で抹殺されていくメンバー達に為すすべもなく……
絶望を感じた私は、最後まで戦っていた勇者にその魔の手が迫った瞬間、残り僅かなMPで咄嗟に唱えた「強制転移」
私はあの時、自分の死を覚悟した。あの時、必要だったのは私ではない。
どんな強敵も斬り裂くことができる「勇者の剣」を使用できる者。世界にたった一人の勇者。
勇者がいなくなれば、世界が終わると言っても過言ではない唯一無二の存在。
その彼を私は自分の命と引き換えに、この世の悪夢とも言えるあの魔物から逃したはず。
そして私は……
何故か生きている?
ここは何処なんだろう?
ゆっくりとベッドから身を起こし、自分の手足が普通に動くことを確認し安堵する。そして床に立ち、床を踏みしめるように一歩ずつゆっくりと窓際へ歩み、窓から外を眺めると、目に入ったきた光景は何処かの町中? のようだ。結構人通りがあり、賑わっている様子だ。以前暮らしていた風景に似ている感じもする。
はて? ここは?
この建物は二階建てのようだ。そして私は一階部分に行く為に階段を、恐る恐るゆっくり降りて行く。階段から垣間見える広い空間を目にした私は、声を掛ける。
「誰かいますか~? 誰かいませんか~?」
…………。
返ってくる返事がないようなので、恐る恐る私は階段を下まで降りた。
落ち着いた木の匂いがし、何処か温もりを感じさせる部屋のフロア。そして大きなカウンターと、テーブルと椅子のセットが何個かある。
何かの店?? カウンターの中に入ると、大きめの流し台に調理台。備え付けの食器棚に大きめのオーブン。小洒落たカフェのような作りだ。
もしかして……
私には心当たりが少しだけあった。
いや……まさかね……
勇者に「強制転移魔法」を詠唱する際、私は自分の死を覚悟しながら、ほんの僅かな望みを祈ってみた。
「次に生まれ変わるなら、平穏で幸せな生活。例えばカフェなんかを営みながら、スローライフを送りたい」まるで少女のような、こんなちっぽけな夢をほんの少しだけ願ってみた。
私の人生は常に死と隣り合わせだった。10歳の時に聖女認定されてからは、楽しいことも、やりたいことも全て制限され、常に私の側には大勢の監視役とも言える国の重鎮達。そして常に私は危険な地へ赴く勇者パーティーに同行させられた。
人を助けることは嫌いではなかったが、私に要求されたのは、もっともっと強くなること。もっともっと皆に尽くすこと。
「傷ついた人を助けて当たり前、敵を倒して当たり前。お前は大聖女なんだから」
ずっとこの言葉を皆に言われ続けてきた。
激しい戦闘中も、回復と身体強化の補助魔法、合間に攻撃をと、一手に任された私は、誰も私に感謝することなどなく、MPが枯渇すれば「役立たずのお荷物」と罵られた。
そんな生活が何年も続き、私は心身共に疲れ果てていた。
あの日も、そんな中で繰り広げられた死闘。
過去最大の死闘と言っても過言ではなかったであろう。
あの時、私が自らの死を覚悟してまで「強制転移」を使用したのは、きっとそんな生活から逃れたかったのかも知れない……
そんな中で私が抱いた、たった一度だけの小さな望み。
もしかして??
叶った???
私は半信半疑で今まで何度も目にした画面を頭の中でイメージした。
『ステータス一覧』
名前 サーシャ・フレミング
(異世界転移者)
称号 大賢者
女 18歳
レベル 999
攻撃力 875
防御力 999
魔力 650000/650000
魔法耐性 999
敏捷 654
固有スキル ・アイテムボックス
レアスキル ・強制転移・空間転移
有効スキル ・魔法作成、錬金術
所持スキル ・オートリカバリー
魔法 ・全属性魔法Ⅳ、補助魔法全
見慣れたその画面には、たった一つだけ今までとは違う文字が一行だけ増えていた。
『異世界転移者』
──私はあの時、異世界に転移してしまったようだ……
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