もう会えなくなる君に恋をした

水色桜

第1話

斜陽に照らされて彼女、美月の髪がキラキラ輝く。透き通るような白い肌は私の視線をつかんで離さない。彼女と出会ったのは1か月前の音楽室でのことだった。私がヴィオラを練習するために放課後音楽室に向かっていると、音楽室からピアノの演奏が聞こえてきたのだ。端正な顔立ちにすらりとした体型、初めはモデルか何かだと思った。

「いつまでこっちにいられるの?」

私は美月に問いかけた。美月はもうここには長くいられないことは分かっていた。だからこそ残された時間で思い出をたくさん作りたいのだ。

「あと2週間くらいだな。私と過ごしたいなんて本当に物好きだな。君は。」

美月はピアノを弾きながら事も無げに返す。

「あと2週間しかないんだね…。ねえ今度一緒に駅前にスイーツ食べに行こうよ。ポムっていうカフェのアップルパイが絶品らしいの。」

「私と一緒にいたら君がどう思われるかわからないぞ。」

「でも…。」

彼女の言うとおりだった。私が彼女と一緒にいれば必ず白い目で見られることになるだろう。でも、それでもこのまま何もしないままお別れなんて嫌だ。

「私は…。それでもあなたと一緒にいた」

言い終わらないうちに美月が突然立ち上がり、私の唇に美月の唇を重ねる。

「えっなっ」

「これじゃだめか?」

美月の唇はひやりとして冷たかった。

「君の心を奪ったお詫びだ。君と一緒にいることが大切なんじゃなくて、どう過ごすかが大切だと私は思うんだ。二人だけの時間が私はほしい。」

間近でみる美月の顔はあまりに美しく、心臓が飛び出そうな感じがした。幽霊にときめいたなんてきっと誰にも言えないだろう。


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もう会えなくなる君に恋をした 水色桜 @Mizuiro__sakura

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