十一 レプティリアの壊滅
「奴ら、卵性なんだよ。一回に二十個くらい、卵を生むんだよ。それ以上かな・・・。だから、同じのがたくさんいるんだよ」とクピ。
「よし。恒星ヘリオスに、転送スキップ(時空間転送)してくれ」
バスコが指示した。
「ねえ、まってよ。レプティリアも馬鹿じゃないわ。仲間が消えたら疑うよ。
誰かが宇宙戦艦ごと女帝リズと大佐を消滅して空間を岩石で埋めたのに、レプティリアは気づいてないでしょ。単なる事故だと思ってるはずよ。
調べてね!」
「どういう事なの?」とクピ。
「たとえばだよ。怒らないでね。
バスコが事故死して遺体があったら。死んだのを納得するよね。
だけど、バスコが行方不明になったら、誘拐されたと思って、誘拐した者を探すわよね」
「なるほどね。事故死したと納得させるんだな・・・。
良い方法が無いかな・・・」
バスコはマリーの考えに賛同している。
「ねえねえ、レプティリアだけが感染する病気があれば、いいんだよね。そういうのがあれば、惑星ガイアにバラ蒔いていいよね」
「ヒューマに感染しないんだな?
ウィルスか?バクテリアか?どっちだ?」
「バクテリアだよ。ヒューマに感染しないよ。
だけどエイプに影響が出るよ。今以上に独裁的になるよ」とクピ。
「エイプの独裁的性格に変わりはないぜ。ばらまいてやれよ」
バスコに賛同してマリーが言う。
「そうよ。レプティリアが壊滅したら、エイプを壊滅すればいいわ。
エイプが今以上に独裁的になっても、エイプを壊滅するのは同じよ。
レプティリアが壊滅すれば、ここ惑星アルギランにエイプは侵略できなくなる。それで、私たちのミッションは終了だ」
マリーはそう言って安心している。
クピはエイプがどう変化するか気になった。
クラリスによる計算上の、遺伝子による推測と実際は異なる場合がある。レプティリアとエイプだけが感染するバクテリアを惑星ガイアに蒔いてみなければ、エイプがどう変化するか不明だ。
「クピ。エイプの遺伝子はわかってるんだろう?そして、ばらまくバクテリアもわかってるんだろう?
そしたら、シミュレートしてみたらいいよ」
バスコはクピに確認して指示した。
「うん。レプティリアは壊滅するよ。
ヒューマは感染しないよ。
エイプも感染して性格が凶暴化するよ!」
「エイプはどうなるの?」
マリーはエイプの変化が気になった。
「レプティリアが壊滅するから、エイプに意識内進入していた精神生命体ニオブの末裔の一族・フェルミの精神と意識が消えて、エイプがレプティリアの意志を継いで凶暴になるよ・・・」
クピは説明した。
レプティリアは、精神生命体ニオブの末裔の一族・フェルミに意識内進入してフェルミを支配し、エイプが惑星ガイアを支配するよう、フェルミをエイプに精神共棲させてエイプの潜在能力、独占と支配の精神を引き出していたが、レプティリアはそれをコントロールしていた。
レプティリアが消えれば、レプティリアが意識内進入していたフェルミは消える。そして、レプティリアがフェルミを通じてコントローをしていたエイプの独占と支配の精神が一挙にエイプの意識に現われ、エイプは凶暴化する。
つまり、エイプを惑星移住計画用球体型宇宙戦艦で惑星アルギランに移住して独占と支配の精神を育てなくても、エイプの精神から、意識内進入しているフェルミが立ち去ればエイプは凶暴化したのだったが、そうなっては、レプティリアがエイプを操れないのをレプティリアは認識していた。
「ねえねえ。エイプを消滅するミッションは、マリー・ゴールド大佐の精神共棲体の、オリオン国家連邦共和国代表の指揮官・総統Jから、マリー・ゴールド大佐を通じてだよね。
ということは~、電脳宇宙意識のPDやクラリスからって事だよね~。
そしたら、惑星ガイアにバクテリアを蒔いていいか、クラリスに訊いてみるね・・・」
クピは〈ガジェッド〉のコクピットのコントロールポッドで、自問自答するように、ぶつぶつ呟いた・・・。
しばらくするとクピは言った。
「クラリスが、火星と木星の間にある小天体をばらまいていいって言ったよ」
クピが話すのは、火星の公転軌道と木星の公転軌道との間に存在する、小惑星帯の小天体だ。
「よし。小天体を転送スキップ(時空間転送)してくれ」
バスコは4D映像探査ターゲットと転送スキップ(時空間転送)のターゲットマークした4D探査映像を確認した。
全てのレプティリアを見つけて、転送スキップ(時空間転送)する予定だったから、女帝と大佐の波動残渣を思考記憶探査してレプティリアの4D映像探査ターゲットは確認済みだ。すでに4D映像探査ターゲットの全レプティリアに、転送スキップ(時空間転送)のターゲットマークが成されている。このターゲットマークの近辺に、小天体をスキップするだけだ。
「ねえねえ、クラリスが話したいって言ってるよ」
「わかったわ。いいわね」
「ああ、いいよ。質問してくれ」
マリーとバスコが承諾すると、黒髪をポニーテールにしたバトルスーツの若い女戦士がコクピットに現れて、コントロールポッドのシートに座った。防御エネルギーフィールドで構成されたクラリスのアバターだ。
『惑星ガイアのレプティリアが消えれば、あなたたちのミッションは完了です。
現在、惑星ガイアでレプティリアとエイプの存在を知っているヒューマの戦闘員は、惑星ガイアの衛星ディアナを周回している宇宙戦艦のクルーと、惑星ガイアにいる二人だけです。この者たちはヒューマのニューロイドです。
衛星ディアナを周回している宇宙戦艦は第1回目のフェルミ艦隊攻撃を終えたばかりです。フェルミ艦隊は壊滅していません。今後、フェルミ艦隊からの反撃が続きます。
従って惑星ガイアにいる二人の戦闘員がレプティリア壊滅後のエイプ壊滅に動きます。
総司令部にいる三人は、実戦経験の無い、非戦闘員です。ニューロイドでもありません。
ニューロイドはヒューマの新人類です。精神波(心の思考である精神思考による意志疎通)を使って意志疎通し、平行宇宙を移動して得た様々な記憶を宿しています』
「ニューロイドの精神と意識は平行宇宙で戦ってきた戦闘員の精神と意識って事だな。誰と戦ってきたんだ?」
バスコはクラリスに訊いた。
『ニューロイドたちが戦って壊滅させたのは、平行宇宙を支配しつつあった悪しき独裁種族、獣脚類が収斂進化したディノサウロイド、通称ディノスです。彼らニューロイドの記憶が艦隊壊滅とエイプの壊滅に役立ちます』
「バクテリアをばらまいた後で、エイプを転送スキップ(時空間転送)するのはだめか?転送スキップ(時空間転送)すれば一挙に片づくぞ」
「そうよ。レプティリアにしろ。フェルミにしろ、エイプにしろ、なぜスキップ(亜空間移動)しないの?」
バスコの主張をマリーが擁護した。
『ヒューマは子どもを育てる場合、子どもができることは、子どもにやらせるでしょう。
転送スキップ(時空間転送)は道具です。むやみに道具を使ったら、ヒューマの能力が発揮できなくなります』
「ヒューマはヒューマの兵器と武器で、エイプと戦えと言うことか?」
バスコが怪訝な顔になった。マリーも考えている事は同じだ。
『そうです。戦闘員の他に、惑星ガイアでレプティリアの影響を受けていないヒューマは総司令部の三名だけです。
総司令部の三名は、霞が関の警察庁警察機構局特捜部の本間宗太郎警察庁長官と、防衛省極秘武器開発局、通称サイボーグ開発局・CDBの小関久夫CDB局長と、防衛省防衛局対潜入工作員捜査部の東条信一一等陸尉の三名です。
私はこの者たちを通じて戦闘員に指示していました。
戦闘員たちに、精神生命体ニオブのニューロイドが精神共棲して、戦闘員たちが新たなニューロイドになった時点で、戦闘員たちは私から直接指令を受けるようになりました』
「ということは、私たちがバクテリアを惑星ガイアにばらまいた後、エイプをどうすればいいの?惑星ガイアの戦闘員二人でエイプを壊滅するの?」
そんな馬鹿な事を実行できるはずがない・・・。ヒューマが一人で使える武器や兵器には限りがある。全てのエイプを壊滅するなど、不可能に近い。
いったいクラリスは何を考えてるのだろう、とマリーは思った。
『クピ、バスコ、マリー。小天体を転送スキップ(時空間転送)してください』とクラリス。
「どうやって惑星ガイアの戦闘員二人だけで、惑星ガイアのエイプを壊滅するんだ?」
バスコは惑星ガイアのエイプ攻撃が気になった。
『議論より、当面の危険の排除です。小天体を転送スキップ(時空間転送)してください』
クラリスはバスコを睨んだ。
惑星ガイアのレプティリアの4D映像探査ターゲットは確認済みだ。全レプティリアに、転送スキップ(時空間転送)のターゲットマークが成されている。このターゲットマークの近辺に、小天体をスキップするだけだ。
クラリスは何か考えている・・・とバスコは思った。
クラリスの考えは何だ?知る方法は・・・ある!クピはクラリスのサブユニットだ・・・。あとでクピに訊こう・・・。
「わかった。
クピ。マリー。小天体を、ターゲットマークしたレプティリアの近くに、転送スキップ(時空間転送)してくれ」
「了解」
「わかりました」
クピとマリーは、火星の公転軌道と木星の公転軌道との間に存在する、小惑星帯の小天体を惑星ガイアへ転送スキップ(時空間転送)した。
レプティリアが住む地球上の各地に、突如、小天体が現われた。
小天体から大気中へ拡がったバクテリアはレプティリアに感染し、レプティリアの死滅が始まった。
「これで、何もしなくてもレプティリアは壊滅だよ~。
ねえ、バスコとマリー。おうちへ帰れるよ~」
クピがそう言った時、コントロールポッドのクラリスが意味ありげに微笑んだ。
もしかして・・・。バスコは不吉な予感がした。
クラリスは黒髪をポニーテールにしたバトルスーツの若い女戦士、素粒子多重位相反転防御エネルギーフィールドで構成されたアバターだ。AIを介してこの平行宇宙に現われている宇宙意識、つまり電脳宇宙意識だ。クラリスが望むAIが存在すれば、宇宙意識のクラリスは、どの平行宇宙にも存在できるはずだ・・・。
「クピ。そういうことだな?」
「うん。でも、あたしは、よくわかんないよ~」
「そうでもなさそうだよ。
クラリス。私たちは家に帰るんだろう?」
マリーがクラリスに確認した。
ここはリナル銀河・カオス星雲・アルギリウス星系の第二惑星アルギランだ。
家は、リナル銀河・カオス星雲・リオネル星系(恒星リオネル)・第三惑星イオスのコンラッドシティーにあるバスコの岩窟住居だ。
『バスコもマリーも、AIが内蔵された戦闘気密バトルスーツとバトルアーマーを着用しています。AIによって身体環境は保護され、かつ、宇宙戦艦と同等の防衛機能と擬態機能があります。クピも私も、AIが有る限り存在できますよ』
「何だって?」とバスコ。
「やっぱり。嫌な予感がしてたんだよね」
マリーが苦笑いした。
『装備されてる武器と兵器は御存じの通りです』
クラリスがそう言うとバスコとマリーの意識に記憶が現われた。
バトルアーマーには、MA多機能KB銃、MI4粒子ビーム拳銃、N型迫撃弾(超小型ミサイル)、BA巡航弾(巡航ミサイル型手榴弾)、レーザービーム銃(バトルスーツ内蔵型)、コンバットナイフ、スカウター通信機バトルアーマーには、それらと防御エネルギーフィールドのシールドを管理するAIがすでに装備されている。
これでバトルアーマーの重量は30kgを越えるがバトルアーマーの機能を維持するPDドライブ(プロミドン推進装置)によって、装備のバトルアーマーは無重量化とステルス化が成され、同時に、望むスタイルの衣類に変身できる。
『さあ、移動しましよう・・・』
クラリスは、隣の家へ行くように調子でそう言った。
(ⅩⅢ Another Univers②② 異星体② アウトサイダー 了)
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