四 移動 

 さて、どうやってエイプとヒューマを見分ければ良いか?遺伝子サンプルを比較するしかない。コロニー用の惑星移住用戦艦はこれまで何度も使われてきた。全ての入植コロニーが惑星移住用戦艦で全て同型だ。エイプの惑星移住用戦艦を見つけるのも大変だ。


「バスコ。だいじょうだよ~。あたしたちの〈ガジェッド〉は多重位相反転シールドでステルス状態になれるよ。それに牽引ビームを使って4D探査捕捉できるし、物質をスキップ(時空間移動)もできるんだよ」

 バスコは〈ガジェッド〉の機能を忘れていた。


〈ガジェッド〉は、壊滅した異星体アイネクが開発したステルス調査艇だった。ステルス調査艇は時空間移動するスキップ機能があったが、物体を時空間移動させる機能は無かった。

 クピとバスコは素粒子(ヒッグス粒子)信号による時空間転移伝播を開発して亜空間を通じた他時空間の情報探査・4D探査を可能にした。

 その結果、4D探査(素粒子(ヒッグス粒子)信号時空間転移伝播探査)のみならず、亜空間と時空間が交互に空間を構成する多重位相反転シールドが可能になり、防御エネルギーフィールドによる位相反転シールドがさらに強化されてステルス性能が高まり、〈ガジェッド〉の自己質量より小さな質量の物体をスキップ(物体を時空間移動させる機能)させる機能を持った。それは4D探査においても可能だ。つまり、4D探査の素粒子(ヒッグス粒子)信号時空間転移伝播探査をステルス状態でスキップ(時空間移動)できるのだ。


「そしたら、ニガルの上空に滞空するか、高台に着陸するかどっちにする?」

 そう言いながらマリーは着陸地点を探している。


「ステルスのまま着陸だ」

〈ガジェッド〉は多重位相反転シールドしたままステルスを保っている。

「了解」

 話しているあいだに、〈ガジェッド〉は多重位相反転シールドによるステルスのまま、合法的入植者の町であるニガルの近郊の、テーブルマウンテンの頂きに着陸した。


「バスコ。ヒューマの遺伝子を持たない、ヒューマらしい者を4D探査(素粒子(ヒッグス粒子)信号時空間転移伝播探査)するよ」

 マリーがバスコとクピの話をまとめてそう結論づけた。惑星ガイア流に言えば、ホモ・サピエンスとネアンデルタールの遺伝子の違いに相当する。


「探査してくれ。

 マリーが見つけ次第、クピはエイプから遺伝子サンプルを取るんだ」

「了解。バスコは何するの?」

「一瞬に壊滅させる方法を考える」

 そう言いながら、バスコは、すでに、恒星アルギリウスを使う、エイプの壊滅方法を考えていた。

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