一 誰がために警報は鳴る?

 恒星アルギリウスが昇り大地を照らした。

 陽射しは強く、乾いたトウモロコシが、焼けついたカージオイド型単葉エアーヴィークル〈ガジェッド〉の機体隔壁で弾け、それを目当てにフィンチが現れた。


 トウモロコシもフィンチも、1700万光年も彼方からここにバスコが運んだ代物だ。こ

の大地がトウモロコシとフィンチの生態に合って成長が著しい。その事をトウモロコシもフィンチも認識して、いつもバスコに限りない感謝を示している。


 感謝を表しているのは彼らだけではない。これから現れるであろう、巨大怪鳥・カプルコンドラも、バスコの前に現れるたびに、感謝の意を示しているがまだ不足している物がある。それはわかっている。


「焼けたよ!」

 とクピが〈ガジェッド〉のハッチを開けてバスコを呼んでハッチを閉めた。スカウターや脳内インプラントで会話できるのに、いつもクピはバスコを呼ぶ。あの娘なりに人生を満喫している証だ。

「バスコ!早く食べなよ!バレると、モアに食われちゃうよ!」

 クピは警戒して辺りを見渡している。

 自分で周囲を確かめなくても、〈ガジェッド〉の探査機能で、襲ってくる有機体も無機体も全て感知できる。それは地中からの襲撃にも対応している。


「ポップコーンを食うか?フィンチの焼き鳥を食うか?」

「コーンは食べるけど、フィンチはいらないよ。スズメが可哀想だよ!」

 クピは コーンとスクロファのベーコンを炒めて、モアの卵とスクランブルしたものを皿に乗せ、岩窟住居の入口のベンチに腰かけているバスコのテーブルに持ってきた。

「ほら、早く食べないと、カプルコンドラに横取りされるよ!そうでなきゃ、モアが怒り狂って現れるからね!」

「また、モアの卵を失敬したんか?そりゃあ、モアも怒り狂うぞ!

 そうは言っても、クピに卵を取られるモアもマヌケだ・・・」

 バスコは皿の半熟卵を口に入れた。何とも言えぬまろやかな味だ・・・。


 そう思っていたら、インプラントの警報が頭の中で響いた。

「クソ!スクランブルだ!モアのスクランブルを食った途端にこうだ!

 クピ!料理を〈ガジェッド〉へ運んでくれ!」

 搭乗ゲートが開いて、マリーが手招きした。

 バスコはベンチを岩窟住居に格納して住居の隔壁を閉じてロックし、〈ガジェッド〉へ走った。すでにクピは卵料理〈ガジェッド〉に運んでコントロールポッドに着いて、マリーとともに発進準備している。


「マリー!得物はどこだ?」

 バスコはコクピット横の休息室で卵料理を食いながら訊いた。

「アナウスだ。熱帯雨林の開発地に現れた。コロニーを建設している」

「ヒューマか?」

「収斂進化したエイプだ」

「歩くのか」

「そうだ。エイプのネオテニーだ。我々と同じ二足歩行だ」


「能力は?」

 もうちょっとでモアの卵のスクランブルの卵料理を食い終わりそうだ。

「惑星入植するくらいだから能力は知れるが、兵器と武器はある。

 かなり好戦的だ。歴史が奴らの獰猛さを物語っている」

「それで、ターゲットは全員か?」

 バスコがそう言って卵料理を食い終わった時、激しい衝撃を受けて〈ガジェッド〉が揺れ、警報が鳴り響いた。

「いったい、何だ?!」

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