三 オリジナルとレプリカンの入れ換え

 ガイア歴、二八一〇年、二月。

 オリオン渦状腕外縁部、テレス星団カプラム星系、惑星カプラム。

 カプコム大陸、カプール州、カプール、カプコム山脈地下、アシュロン商会。



 惑星カプラムの首都カプール近郊、カプコム山脈の地下シェルター内で、〈ドレッドJ〉と商業艦のクルーと家族、そして集荷施設係員とエンジニアたちが、三十二隻のレプリカの商業用宇宙艦と〈ドレッドJ〉のレプリカ艦に乗艦した。全員がレプリカンだ。


 レプリカ艦の司令室のコントロールポッドから、レプリカンのジョーが3D映像通信回線で指示する。

「これよりアシュロン商会本部へ時空間スキップする。

 全員、スキップ態勢をとれ」

 ジョーに続いて、クラリスが3D映像通信回線で告げる。

「二分後にスキップする」

 臨戦態勢同様にバトルスーツとバトルアーマーを装着しているが、艦内空気を抜かないのがスキップ態勢だ。


 一分五十秒後、クラリスが告げる。

「スキップ開始十秒前・・・。

 スキップ!」

 艦内に微細な空中放電が走って、僅かなオゾン臭が漂った瞬間、艦体に小さな衝撃が現れて消えた。




 ガイア歴、二八一〇年、二月。

 オリオン渦状腕外縁部、テレス星団フローラ星系、惑星ユング。

 ダルナ大陸、ダナル州、アシュロン、アシュロン商会本部



 帝国軍警察亜空間転移警護艦隊とテレス連邦共和国軍の三艦隊を壊滅後。

 惑星カプラムのアシュロン商会に居たジョーたち〈ドレッドJ〉のクルーは、テレス帝国軍に気付かれることなくスキップ(時空間転移)して、フローラ星系惑星ユングのアシュロン商会本部へに戻って、アシュロン商会のアシュロネーヤたちの移住を手配していた。



〈ドレッドJ〉の司令室から、ジョーは3D映像通信回線を開いた。

「全アシュロネーヤに伝える。

 クルーの家族を本艦の居住区に収容する。

 アシュロネーヤは商業艦の居住区と船倉の居住区だ」

『クラリス。捕捉説明はないか?』


『捕捉説明はありません。

 オリジナルの家族とアシュロネーヤのスキップ態勢は整っています』

「全員が私の誘導ビームに従って〈ドレッドJ〉と商業艦に乗艦してください」とクラリス。

「以上だ。行動に移れ!」

 そう指令を発して、ジョーは4D映像回線を開いた。

 ヘルメットのバイザーに現れた4D映像のアントニオに、

「アントン。行動開始だ」と伝えた。


「了解。全員スキップリングへ移動しろ!」

 アントニオは、アシュロン商会本部三階執務室の執務デスクからそう指示して、室内にあるスキップリングへ移動した。

 アントニオの指示で、アシュロン商会本部各階のスキップリングから、バトルスーツとバトルアーマーに身を包んだ〈ドレッドJ〉のクルー家族、アシュロネーヤと家族、そして地階一階から五階までの集荷施設係員とエンジニアたちが、〈ドレッドJ〉と三十二隻の商業用宇宙艦へスキップした。

 全員のスキップを確認して、アントニオは執務室のスキップリングから〈ドレッドJ〉にスキップした。


「全員スキップ完了!」とクラリス。

「全艦、スキップしろ!」とジョー。

 地下五階格納庫に係留された三十二隻の商業用宇宙艦が同階の非重力場、亜空間転移ターミナルのスキップリングへ移動した。次々にスキップしている。

「〈ドレッドJ〉、スキップします」

 クラリスの連絡とともに、〈ドレッドJ〉がスキップして係留ドックから消えた。



 数十秒後。

 次々に三十二隻の商業用宇宙艦のレプリカ艦と〈ドレッドJ〉のレプリカ艦がスキップリングに現れて、地下五階の格納庫に係留された。


 下船したレプリカンのクルーが、スキップリングでアシュロン商会本部の各階へ移動し、一階から十二階までレプリカンのアシュロネーヤと家族で溢れた。

 地階一階から五階までの集荷施設と格納庫と亜空間転移ターミナルのスキップリングに、レプリカンの係員とエンジニアたちが配置についている。


「ジョー。惑星ユングのアシュロン商会を頼むぞ」

 アシュロン商会本部三階執務室の執務デスクから、レプリカンのアントニオが、3D映像の、サングラスのメガネ端末をかけたレプリカンのジョーに伝えた。


「了解。アントン」

 ジョーは〈ドレッドJ〉のレプリカ艦の司令室からアントニオに微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る