十五 新兵器
首都スザーラのキトラ帝国政府、キトラ帝国軍司令部で、アトラス・フォン・ラプト将軍は、情報収集衛星防衛システムが捕捉した3D映像に目を凝らした。
情報収集衛星からヒューマのアポロン艦隊の球体型宇宙戦艦を攻撃する方法もあったが、攻撃と同時に衛星を破壊されれば、戦況を知る手立ては地上の光学機器映像しかなくなる。それは避けねばならなかった。
ヒューマ艦隊の火力は強烈だ。これではヒューマとの戦いには勝てない・・・。
「ニールス、ヒューマの戦艦のシールドを見せてくれ・・・」
アトラス・フォン・ラプトス将軍の指示を受けて、ニールス・ファ・ラプト作戦参謀長は情報収集衛星防衛システムのオペレーターに命じ、ヒューマの戦艦の防衛網を3D映像表示した。
「多重シールドか・・・」
球体艦体の至る所から、太陽フレアのようにシールドが湧きでて艦体全体を多重に包んでいる。これでは帝国軍のどんな攻撃にもびくともしない。
「ディノス艦隊を消滅したエネルギー弾は、連絡艇が入った通路から、部分的にシールド解除されて発射されました。
今、エルサニスが、エネルギー弾を分析しています。
ヒューマのシールドに、我々の兵器がどれだけ効果があるか、確認した方がいいように思います」
ニールス・ファ・ラプト作戦参謀長がアトラス・フォン・ラプト将軍に攻撃を提案したのは、分析速度の遅さを非難されないための策だった。
ニールス・ファ・ラプト作戦参謀長はAIエルサニスの分析結果を苛々しながら待った。
「衛星防衛システムから特大の粒子ビームパルス弾を打ちこめ!」
アトラス・フォン・ラプト将軍が指示した。
「了解しました。
レザグ、ノフリ。最も近い衛星を準備して待機しろ」
ニールス・ファ・ラプト作戦参謀長の指示で、情報収集衛星防衛システムのオペレーター二人が、アポロン艦隊の球体型宇宙戦艦からおよそ三万ダルク(およそ三万メートル)離れた静止衛星の粒子ビーム砲に、エネルギーを充填させた。
「準備完了!距離三万一千ダルク」
「撃て!」
一瞬に、巨大粒子ビームパルスがアポロン艦隊の球体型宇宙戦艦へ放たれた。
だが、粒子ビームパルスは水面に落下する淡雪のように、球体型宇宙戦艦のシールドで吸収消滅された。
「粒子ビームパルスが効かない・・・」
アトラス・フォン・ラプト将軍は茫然と3D映像の球体型宇宙戦艦を見つめた。
マルメ・ディア・ディノス大臣のアホが、ヒューマにスキップドライブの設計図を渡すからこうなったのだ。アホは責任をとらずに消滅した。さて、どうしたものか・・・。
アトラス・フォン・ラプト将軍は考えこんだ。
ヒューマのエネルギー弾の分析終了を知らせるチャイムが鳴った。AIエルサニスのアバターが現れて説明する。
「ニールス・ファ・ラプト作戦参謀長。
ヒューマのエネルギー弾はヒッグス粒子弾です。エネルギー転換機を逆利用したもので、ヒッグス場を構成して物質を消滅し、再構成もします」
「対抗方法はないか?」
「ありません。時間をいただければヒッグス粒子弾を作れます」
「どれくらい時間が必要か?」
「一日です」
「急いでくれ。ディノス艦隊の攻撃で、開戦した・・・」
3D映像では、巨大な球体型宇宙戦艦が卵を産むように、次々とヒッグス粒子弾を発射している。ヒューマの伝説にあるソドムとゴモラの如く、キトラ帝国の軍事施設が次々に消滅してゆく。
「エルサニス。防衛方法はないか?」
アトラス・フォン・ラプト将軍が訊いた。
「ヒッグス粒子弾による消滅範囲より、さらに大きな多重シールドを張ってください。
ヒューマが軍事施設を攻撃するのは、帝国に巨大多重シールドを張らせないためです」
「ニールス。ただちに多重シールドを張れ!
エルサニス、各軍事施設へ連絡しろ!」
アトラス・フォン・ラプト将軍がそう命じた。
「各軍事施設へ通達します!」
ただちにAIエルサニスは、キトラ帝国の全軍事施設へ連絡した。
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