三 地球外知的生命体探査

 ガイア歴、二〇五八年、五月。

 オリオン渦状腕、ヘリオス星系、惑星ガイア、プエルトリコ、アレシボ天文台



 一年後。

 アレシボ天文台の固定式直径三百メートルの電波望遠鏡は直径一千メートルに改築されて、世界各国に同規模の設備が設置された。世界的に

『新たな地球外知的生命体探査』

 が開始された。



 食糧生産は、太陽の異常な膨張による気象のため、徐々に減少傾向にあった。しかし、人類の出生率はさらに増えて、一世代後には確実に食糧難が訪れると懸念された。ケプラーが論文で発表した予想が現実と一致した。


「この異常事態に世界各国が個々に対応した場合、全世界の半数の国家で人類が絶滅する」

 AIクラリスはシミュレーションからそう導いて、

「地球を一つの国家としてまとめ、この異常事態に対処しなければならない」

 と国連議会に提唱した。


 その結果、地球に

『地球国家連邦共和国』

 が誕生した。

 そして、実質的に国家連邦共和国の政府と呼べる地球国家連邦共和国議会対策評議会の、最高責任者の評議委員長に、国連議会議長のボリス・カイトが就任した。

 しかし、地球国家連邦共和国は急激な人口増加に対処できず、ケプラーとモリス・ミラーの論文どおり、人類の惑星移住計画を立案した。


 だが、移住できる惑星がない。そこで地球国家連邦共和国議会は、ケプラーとモリス・ミラーの論文、

『新たな地球外知的生命体探査と惑星移住計画』

 を推進して、計画段階の最高責任者にケプラーとモリス・ミラーを任命した。

 見方を変えれば、地球国家連邦共和国議会は自分たちが対処できない史上最大の事態を、たった二人の科学者に丸投げしたのである。呆れた地球国家連邦共和国議会である。


 地球国家連邦共和国議会はAIクラリスとケプラーとモリス・ミラーの提案を承認し、人類の現状の記録と人類のあらゆる文化と科学の記録を、惑星探査機・ボイジャーⅢに搭載して、オリオン渦状腕外縁部宇宙へ発進させて、アレシボ天文台をはじめ世界各地の天文台は、地球外知的生命体へ向けて人類の救援信号を発信し、返答を待った。

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