悪役令嬢の矜持〜世界が望む悪役令嬢を演じればよろしいのですわね〜

白雲八鈴

第1話 悪役令嬢、婚約破棄される


「貴様との婚約は破棄だ!」


 はい、なんだか予想通りの婚約破棄をいただきました。ありきたりですわ。もう少し頭を使えばよろしいのに。


「貴様はロザリーを平民だからと馬鹿にし、差別を行った!これは学園の教育方針にも違反することだ!」


 まぁ、馬鹿にはしておりませんが、いつも着ている制服は同じ物ですの?とは聞いたことはありますわ。


 夏の頃でしたか、制服が無くなったと言って騒ぎ立てておりましたので、洗い替えの制服を着ればよろしいのでは?と侯爵令嬢のマリーローズ様がおっしゃったのです。そうすると洗い替えなんて無いとロザリー嬢がおっしゃるので、『いつも着ている制服は同じ物ですの?』と思わず聞いてしまったことはあります。それを聞いた周りの方々がクスクスと笑い始め、ロザリー嬢が『平民だからと馬鹿にして』と去って行かれたことは記憶にあります。

 ただの疑問を口にしただけで、馬鹿にしたとおっしゃるのは心外ですわ。


「馬鹿にはしておりませんが、わたくしロザリー様が洗い替えの制服もなく、毎日同じ制服を着ているとは存じませんでしたの。これを差別とおっしゃるのであれば、学園側が平民の方々に予備の制服を用意すべきですわね」

「え?」


 まぁ、殿下もご存知なかったのですね。


「そ、それより酷いことはロザリーの私物を捨てたり、教材を破り捨てていたことだ!」


 意味がわかりませんわ。なぜ、わたくしがそのようなことをしなければならないのでしょう。


「それの何が意味を成すのです?わたくしがなぜ人の物を捨てなければならないのでしょう?」

「ひ、ひどい」


 え?貴女の頭の方が酷いですわ。今日は卒業パーティーですのに、頭の上に大きな鳥の羽を挿して、頭がもげそうなほど宝石を散りばめて、どこの大道芸人かというほど濃い化粧をしているなんて、誰の趣味か聞きたいですわ。


「それは貴様がロザリーに嫉妬したからに決まっているだろう!」

「まぁ!わたくしがロザリー様に嫉妬を?ごめんなさい。どこに嫉妬すればいいのかわかりませんわ。わたくしはいつも主席ですし、制服の替えにも困りませんし、教材が無くなっても買えばいいだけですもの。わたくしはロザリー様に何を嫉妬すればよろしいのですか?」



 本当に何を嫉妬すべきなのでしょうか。私はこの生を後悔なく生きる為に努力をしてまいりましたのよ?そう、あの時から。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る