心霊スポット
連喜
第1話 心霊スポット巡り
俺は心霊スポット巡りが趣味だった。
一人で行って写真を撮って、自分のブログにアップする。
すると、見てくれた人からコメントをもらえる。そのやり取りが楽しい。
リアルでは心霊ファンに会ったことがないのに、ネットにはたくさんいる。ホラー映画や小説が好きという人はいるけど、ガチの幽霊を見てみたいという人には会ったことがないから、俺の趣味は誰にも言えないし、変にカミングアウトするとスピリチュアル系に勧誘されそうだから、別の意味でも慎重になっていた。
俺は旅行が好きだったけど、日本全国どんな田舎でも楽しめるのは、神社、郷土資料館、そして心霊スポットだと思う。お金もあまりかからないし、ニッチな趣味だから人もあまりいない。多分、一緒に行きたいという人はいないから、行くのは大体一人。つまらなくても、俺に責任はないし、ただ「来なければよかった」と心の中で思うだけだ。
俺は趣味で心霊スポット巡りのブログをやっていて、それなりにカウンターも回っていたけど、そのうち似たようなブログを始める人が現れ出した。俺はアフィリエイトで稼いでるわけじゃないし、ただ、趣味でやってるんだけど、気になってしまう。
見てみると、その人の方が写真もいいし、デザインもセンスがあって、文章もうまい。俺のブログはだんだん見る人が減って来た。というか、恐ろしく減ってしまった。もはや、やっている意味がないくらいだった。
しかも、その人は、なぜか俺が取材した場所を知っていて、先回りしているかのように記事を書いていた。俺は普段働いているから、ブログをアップデートするのに1週間くらいかかる。しかし、その人は俺が行った数日後にはその場所の記事を書いている。俺のパソコンがハッキングされているか、俺の脳内にその人が入り込んでいるとしか思えなかった。
俺は都内に住んでいるから、お盆の時期に、両国の『東京都慰霊堂』に行ってきた。そこには、関東大震災や東京大空襲の時に犠牲になった約16万3000体の遺骨が納められている。もともとその辺は空襲の被害が酷かった場所だし、近くにある回向院というお寺は、振袖火事と呼ばれる明暦の大火で亡くなった、10万8000人もの人々に加え、安政の大地震で亡くなった人や、無縁仏も供養している。たまたまそういう施設があるからか、何となく思うところがある。
国技館のある近代的な街だが、かなりディープなスポットである。
建物はほぼ戦後に建ったものだろう。
行っちゃ悪いけど、風情があまりない。
俺は先祖の墓参りには行かないのに、なぜかそこには時々足を運んでいる。コンクリートの街並みでありながら、行くたびに一抹の恐怖を感じる。何となく胸騒ぎがして落ち着かないのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます