多重人格者の異世界転生

タイサン

第1話 始まり

「ここは何処だ。俺は交通事故に遭って、、。」


「目覚めたか、クウゴ」


「誰だ!?」


「私は君たちが言うところの神だ」


神を名乗る人物、交通事故に遭ったにも関わらず怪我のない体、どこまでも広がる真っ白な空間、クウゴは自分が死んだことを悟った。


「それで、俺は天国か地獄、どっちに行けば良いんだ?」


「異世界だ」


「異世界?何故、そんな所に送られる?」


「君の願いを叶える為だ。君は多重人格で12の人格を持っている。そんな君は他の人格を全て消したいと心から願っていた。だから12の人格に肉体を与え、殺し合いをさせ、直接消させることにした。君が生き残れば交通事故に遭わない世界線で君だけの人格を持たせて生き返らせてやる」


馬鹿げている。死んだ後に殺し合いをさせられるなんて。普通の人間なら断るだろう。だが、俺は受け入れることにした。物心ついた頃から他の人格に振り回されて生きてきた。あの人生のままなら、生き返りたいと思うこともなかっただろう。だが、もし、普通の人生が送れるならやりたいことがたくさんあった。だから、この神様の言うことがハッタリだったとしても1%でも可能性があるなら賭けてみたいと思ったからだ。


「良いだろう、その提案、受けてやる!」


「そうか、受け入れるか、では異世界へ転送させてもらう」


〜草原〜


「ここが異世界か」


初めての世界なのに、この世界の情報が頭に入っている。神様の仕業かもしれない。


「アビリティオン」


能力を視認できる呪文だ。頭に入っていた情報によると、この世界はRPGでよく見るような世界観だから、まずは自分の能力を把握しておく必要がある。


スキル名 ゼウス

天候と大地を操ることができる


ステータス

魔力S

攻撃力A

防御力A

速度A


この世界の基準で考えれば素晴らしい能力だ。


「とりあえず、潜伏しながら、他の人格を探そう」


草原を抜けようと歩き出した瞬間、上空から大男が槍で攻撃を仕掛けてきた。


「危ねぇ」


クウゴは間一髪の所でかわすことができた。


「クウゴォ」


俺を知っているということは11の人格の内の誰かか。


「お前は誰だ?」


「俺はアツトだ、会えて嬉しいぜ」


アツトは人格の中でも喧嘩っ早い性格の奴だ、聞きたいこともあるが一旦、力でねじ伏せるしかない。


「俺も嬉しいよ、探す暇が省けた」


そう俺が言うとアツトは2本ある槍で好き放題に攻撃を仕掛けてきた。それと同時に俺も身を守る為大地を操り壁を作る。


バゴォーン


「なんて攻撃力だ、何重にもした壁が一瞬で貫かれる」


「ハッハー、そんなもの、何の意味もないぞ!」


防御だけではやられてしまう、攻撃しなければ。


クウゴは天候を操り、黒い雲が上空に集まる。


「サンダー」


ドシャーン


スキルの天候変化と呪文の重ねがけの電撃がアツトに落ちる。


煙が晴れるとアツトは何のダメージも無く立っていた。


「今のは攻撃のつもりか?」


そう言うとアツトは間髪いれずに攻撃の姿勢に入る。


「仕方ない」


クウゴは天候変化で霧を作り出す。


「逃げるつもりか、無駄だぞ!」


ザザッ


霧の中、音がする方を向くと人影がアツトの目に映る。


「そこかぁ!」


人影を貫くがそれは土人形だった。


待ち構えいたクウゴがアツトの背後に回る。


「お前なら引っかかると思ったよ、じゃあな」


「まっ、待ってくれ」


「ケラウノス!」


ケラウノス、スキル ゼウスの最大攻撃、近づくほどに威力の上がる電撃、これを0距離でアツトに撃ち放った。


「グァァァァ」


アツトの悲鳴が鳴り響き、黒焦げの死体が出来上がった。


こいつも何か願いがあったのだろうか、いや、考えるのはやめておこう。


俺はその死体を見ながら、普通の人生を手に入れる為ならどんなことでもする覚悟を改めてするのだった。




























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