第2話
この学校には、年次がない。
ユニット制で、取った授業の分だけのクラスになる。政府公認の、試験なんちゃら制度を導入したやつ。
ただ、東京にいる人たちのやることはよく分からなくて、結局最後までは数年間の在籍が必要。つまりユニットを取ったあとは、暇。クラスに出る必要もない。そもそも出席という概念がない。
だからわたしは、基本的に学校ではじっとしている。取れるユニットは全て取得した。申請すれば、すぐに大学や、更にその上の研究機関まで推薦状がもらえる。
勉強には、あまり興味がなかった。取れるから、取れるだけ取った。それだけ。クレーンゲームたくさんやったりとか、安売りのお菓子たくさん買ったりとか、そういうのと同じ。人生と時間の、先物買い。だからといって、余った人生と時間を、何に使うかも知らない。
クラス。ユニット制だからといって、横の繋がりがないかといえば、そうでもなかった。隣の席という概念もあるし、クラスメイトという虚構も存在する。学祭もある。運動会はない。たぶん、年齢がばらばらで年次もないから体力差をつけにくいせい。
わたしの服に。視線を感じる。わたしじゃなくて。わたしの服。服か。わたしじゃなくて。
あまりこういう経験がないので、後ろを振り向いてみる。
男の人。制服。
「あれ」
もう、わたしの服に興味がなくなったのか。隣を、通り抜けていく。その足取りに、少しだけ不安を感じて。後ろをついていく。
やっぱり。
どこに行けばいいのか、分からないひとの歩きかただった。
エントランスをうろうろして、階段を上っていく。どこのクラスだろうか。もしかしたら、編入のひとかもしれない。
声をかけようと思って、やっぱりやめた。そのかわり、もうすこし後ろをついていく。なんでわたしの、顔じゃなくて。服を見てたのか。それが聞きたい。でも、すぐ優しくしても、聞き出しにくいかもしれない。そんな、どうでもいい思考。
階段を上って、踊り場。あきらめたように、彼が、座り込む。やば。そこで止まんないでよ。ばれるじゃんわたしが。
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