38 ~決意の少女~ KETSUI
っぱあああああああああああん!!!
という
リサ先輩が立っていた場所にあるのは、勢いよく撃ち合わされた重量感の塊の黒い両の手。
その影の両手から、
遠い意識の向こうで、神経が
「―――!」
「〇ミった!?」
「〇ミっとらんわボケェ!!」
中から出てきたのは、交差させた両手で
「まったくもう。念のためでセレナ呼んでなかったら今ので死んでたわよ!」
「トモナ!」
「っ。うん!」
ルナちゃんの呼び掛けに応じて、
それを
「てっきり○ミったかと思ったのだけれど」
「
すかさずリサ先輩がツッコむ。
「ど、どういうこと………?」
「アンタは知らないままでいいわ。トモナ。普通じゃないのはこいつらの方だから」
リサ先輩の
「そう言うあなたも普通じゃない側でしょうに」
「私は
再び襲い掛かってくるディザイアーの魔の手から散り散りに跳び
遅ればせながら
しかし、飛び出そうとしたその足を、形容するのも難しい、硬くも柔らかい、ゾワリとする何かが
「きゃあ!?」
跳ぼうとした
ディザイアーだった。
掴まれた足はどうやら大丈夫みたいだが、少しでも動かすとすぐに
角度や位置が
引き返してきた
「「トモナ!!」」
リサ先輩とは別に、
ルナちゃんが建物の
それでいい。
ルナちゃんは、恐らくもうあまり魔力は残っていないはずだ。
ルナちゃんをこれ以上危険な目に合わさせるわけにはいかない。
「くっ………!」
至近距離に迫る人型ディザイアーへがむしゃらに炎を撃ち込むが、まるでビクともしない。
顔の形をしているだけの二つの
「ぐぅゥゥ……ああ、グぁア」
同じだ。
さっき、
本来、
「いっっ―――!!」
足を捕らえる影の手の力が強まる。
今日
ミシミシと音と感触を伝えてくる足が、それに逆らうように熱くなっていく。
その足と胸で、気持ち悪いくらいに強く、
恐い。怖い。恐い怖い恐いコワいコワいコワいコワいコワいコワいコワい!
本当は初めっから恐かった。
初めてディザイアーと戦った時も。
犬型ディザイアーが目前まで迫った時も。
魚ガエル型ディザイアーに吹き飛ばされて体育館にぶつけられた時も。
いたち型のディザイアーが現れた時、ルナちゃんが来るまでの間も。
名古屋城の屋上で人型ディザイアーを初めて見た時も。
ルナちゃんが人型ディザイアーに勇み行った時も。
テリヤキが居なくなっちゃう時も。
ずっと。
ずっとずっとずっとずっと! 恐かった!
けど、違う。
ダメなんだ。
もう二度と、
だから、戦わなきゃならないんだ。
痛みではなく、自身の無力に。
テリヤキに
鉄の味がする程に、
その時。
「
鼓動の外。
耳を
上げた頭、涙で
それは
解放された足は、地面を
手をついて立ち上がる
「笑いなさい。国家魔法少女フレア。あなたが
「ルナ、ちゃん? ど、どうして……どうして出てきたの!? 魔力はちょっとしかなかったのに、ううん今のでもうほとんど―――!!」
「フレア!!」
「――っ!」
「フレア。あなたにこの名前と魔法を託した魔法猫の意思を。あなた自身が
「………え?」
人型ディザイアーは。視界の
だが、そんなこともお構いなしに、
「あなたは、ここに
ルナちゃんの言う横、少し視線を移した先の影の怪物は、もう
少し離れたところでは、大ダメージを受けた
腕を治しながら、ディザイアーが攻撃の構えを取っているのだ。
「フレア」
優しい。
この戦場で聞こえたとは思えない優しい声が、
「あなたは、私の大切なものを共に護ると言ってくれた。ならば私はあなたの笑顔も守ってみせる。だから、あなたはその笑顔で、あなたの手が届く範囲だけの笑顔を護りなさい」
言われて、数人の人達の笑顔が頭に浮かんだ。
さっき、ルナちゃんに伝えた、失いたくないもの。
「………人は全てを
目の前の彼女は、一瞬だけ、声音と同じ優しい笑みを
そして、すぐさま
「決めなさい。全てを護るなどという人の身に
意識の遠くで、怪物の
それを押しのけ、少しのわがままを、正面に立つ少女に答える。
「違うよ。ルナちゃん」
彼女は間違っていない。
間違っているのは、
けれど、それでは少し
「最低じゃなくて、最大。
「……………」
帰ってきたのは、
「まったく、相変わらずという言葉が、あなたのためにあるように感じられるわね。けれど、そうでなければあなたじゃない、か」
「うん」
驚き
「それじゃあ、さっさとあの化け物を倒すとしましょう。ぐだぐだするのは日本史だけで十分だわ」
「え……? ど、どういうこと?」
ルナちゃんのセリフに困惑していると、握った手を強く引かれる。
「わっ!?」
「私に合わせなさい。フレア。戦いなら私の方が慣れている。それくらいやってのけてくれるでしょう?」
「っ! うん!
杖を握り、ルナちゃんの手を強く握り返して、導かれるままに
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