クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
1.席替え
学生にとって席替えは大きなイベントだ。小・中だけではなく、高校生にとってもその重要度は変わらない。
(無難な人でお願いします無難な人でお願いします無難な人でお願いします!)
心の中で願い事を三回唱える克巳。昼間の時間帯では流れ星も見られるチャンスはないので、残念ながら聞き届ける対象はなかった。
「席順決めるから順番にくじ引けよー」
やる気を感じさせない担任の言葉に、クラスは大いに盛り上がった。
騒いでいるのはクラスでも陽キャと呼ばれる連中だ。克巳はそんな盛り上がった空気に参加することなく、ただただ祈り続けていた。
(近くの席は静かな人……無口な人でも構わない……っ。むしろ何もしゃべらない人なら僕も気が楽なんだ……。せめて勉強に集中させてくれる環境であってくれ!)
クラスメイトに克巳の友人はいない。つまり、彼はぼっちである。
そんな克巳が席替えの結果、もしも陽キャグループに囲まれでもすれば……。居心地が悪いどころの話ではない。授業に集中するどころではなく、下手をすればいじられ遊ばれる危険性があった。
そんなことにでもなれば、克巳は抵抗できる自信はなかった。学校生活すら終わってしまうかもしれない。
克巳が深刻に考えている最中も、くじ引きがどんどん進んでいく。
「おい、次は鈴本だぞ。早くしろー」
「は、はいっ。すみません」
名前を呼ばれて慌てて教卓に向かう。担任の手作りと思われるくじ引きの箱を見つめ、克巳は覚悟を決めて手を伸ばした。
(神様……お願いします! もう絶対に食べ物の好き嫌いはしませんから!)
ついには神頼みまでする克巳。箱の中から一枚の紙を掴み取った。
克巳の願いが届いたのか、紙に書かれていた番号は窓際の後ろから二番目の席になった。
(やった! この場所なら変な人に囲まれる可能性が減ったぞ)
クラスメイトを「変な人」と呼ぶ克巳。心の中なら許されるだろう。
教室の窓際後方という人気のポジションを獲得した。普通ならその席自体に喜ぶものかもしれないが、克巳は近隣の席になる人自体が少なくなったことを喜んでいた。
(あとは無難な人が隣と前後の席を埋めてくれたら言うことないんだけどな)
そう考えながら、くじ引きの行く末を見守っていると、どうやら克巳の願いが届いたのだろうか。近隣の席は克巳が思っている「無難な人」で埋まった。
(おおっ! ありがとう神様! 僕、これからは神様にお祈りを欠かさないようにします!)
克巳は神に感謝し、机をくじの番号のところへと運んだ。
「鈴本くん」
「え?」
新しい席に着いた瞬間、後ろから声をかけられて克巳は振り向く。
そこにいたのは美少女だった。
「し、
クラスで一番の人気者の女子。
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