カップルイベント、先輩と対戦

学校から徒歩ニ十分。

地元では最大の大型ショッピングモールへ到着。


「ゲーセンならここかなと」

「ここ色々お店があるよね~」

「三階まであって一日居られますよね。映画館もありますし」

「うん、たまに蜜柑と遊びに来てた」

「へえ、あの蜜柑先輩と」


どうやら先輩は最近、水泳部の練習で忙しくて来れていなかったらしい。こうして遊ぶのも久しぶりなのだとか。

そういえば、蜜柑先輩が大会が近いとか言っていたような。水泳部を放置していていいのだろうか。


「さっそくゲーセンへ行こっか」

「分かりました。では二階ですね」


先輩と手を繋いだまま、デート気分で二階へ。

周りから見たら、恋人にしか見えないよな。こんな気分を味わえるなんて俺はなんて幸せ者なんだ。今日の運勢に感謝だ。


気づけばゲーセンが見えてきた。


平日だけど、時間帯なせいか学生がチラホラいる。


……む?


気のせいだろうか。

なんだか恋人が多くないか。


「今日、イベントでもあったかな」

「愁くん、今日はカップルイベントやっているんだって」

「え、マジっすか」


天井の幕に【カップルイベント開催中】と書かれていた。どういうことだと首を傾げていると、女性スタッフに話しかけられた。


「そこの学生さん! カップルですよね!?」


「「え……!!」」


こ、これはどう返答したものか。

先輩は困惑しているし、ここは俺が答えるべきだよな。……そうだ、俺は先輩と約束したんだ。恋人のふりをすると。


だから、自信をもって堂々と言って良いはず。


「そ、そうですよ。彼女です」

「そうですよね!! お似合いのカップルだと思っていました!」


女性スタッフがそんな風に褒めるものだから、先輩は顔を真っ赤にして爆発させてしまった。ボンッと音が出てたぞ……!


というか、スタッフさんナイス!


おかげで先輩の可愛いところが拝めましたっ。



「それで、なにか特典があるんですか?」

「はい、そうなんです。このカップルカードを贈呈いたします。これを使うと、どのアーケードゲームも今日に限り、無料プレイできるんです!」


「え、それ凄いですね」

「はい、カップルイベントですから。どうぞ」


スタッフからカップルカードを貰った。どうやら、これを筐体きょうたいについている端末にかざせば何度でもゲームが遊べちゃうようだ。……こりゃすげぇ。


さっそくアーケードコーナーへ向かうと、カップル同士がシューティングゲームしたり、パズルゲームをいていた。


ここのゲーセン、割と古い筐体も多くてビックリする。


「先輩、なにで遊びたいです?」

「う~ん、でも空いてる席が少ないね」

「そうですね。格ゲーの空いていますよ」


格ゲーは操作も難しいから、忌避きひされやすいんだろうな。先輩もこういうゲームは苦手そうだし――んぉ?


「じゃ、勝負しよっか、愁くん!」

「え……先輩、格ゲーっすよ? 俺はいいけど、先輩大丈夫なんです?」

「ふっふっふ。父がゲーマーなんだよね。子供の頃、格闘ゲームをやらされていたから得意なんだよ」


「それは意外すぎますね! これは面白い勝負になりそうです。やりましょう」

「いいよ。わたしに勝てたらキスしてあげる」


「んなっ……!」


突然の提案に、俺は頭が真っ白になった。先輩に勝てればキスしてもらえる!? なんてこった。これは絶対に勝つしかないじゃないか。


というか、そこまでの自信があるということなのか。


「勝てたらね」

「い、いいでしょう。俺が負けた場合は……なんでも言うことを聞きましょう!」

「それいいね。決まり」


席へ座り、俺は筐体を確認した。

えっと……タイトルは【ギルティ】といった。ああ、有名なヤツじゃん。


カップルカードを翳すと、本当にプレイ回数が増えた。無料で遊べるとか最高かよ。

対戦モードにして、キャラクターを選択していく。


俺は頭に紙袋を被ったよく分からんキャラにした。先輩は……あ! あれは俺でも知っている有名なキャラじゃないか。


「先輩、その子にしたんですね」

「うん、シスター服の金髪で可愛いから!」


先輩……コスプレでシスター服着てるからって、共感というか共鳴しちゃったのかな。でも、その子は男の娘・・・ですよ。


バトル開始……!

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