間接キスとライン交換
勝負は終わり、俺たちも屋上を後にした。
腹が減った。食堂へ向かおう。
階段を降り、一階にある食堂を目指す。毎度のことながら他人とすれ違う度に、先輩が注目される。特に今日は男の視線が多い気がする。気のせいかな。
食堂へ入り、俺は自販機で売られているパンを買った。
「あれ、愁くんはパンなの?」
「申し訳ないっす。さっきの一気飲みでお腹がたぽたぽで」
「あ、そっか。じゃ、わたしもパンにしよっかな」
俺はチョコパンを。
先輩はイチゴジャムパンを購入。
空いている隅の席に座る。
先輩が椅子を近づけて隣に座ってきた。なかなかな距離感だ。
嬉しいのだが、周囲の視線も多くなる。
先輩の顔、胸、ふとももをジロジロ見やがって。だが、それほど魅力的なのだから仕方がないといえば仕方がない。
それよりも、俺は重要なことを思い出した。
「そういえば……先輩、ライン教えて下さいよ」
「いいけど、条件があるよ」
「条件ですか?」
「うん。愁くんのパンとわたしのパンを交換して」
「え……でも、食べかけですよ」
「大丈夫。わたしのも食べかけ」
……それでライン交換してくれるなら安いモノか。俺はパンを交換した。
手元に先輩が口にしていたイチゴジャムパンが――ハッ! よく考えろ俺。このパンを食べるということは『間接キス』になるということだ。
事実に震えていると、先輩は俺の食べていたチョコパンをもぐもぐしていた。……はやっ!
てか、先輩……頬が真っ赤じゃないか。
ぷるぷると震えながらも俺のチョコパンを小動物のように食べている。ああ……なんて可愛いんだ。この姿を写真に収めたい。
けど、我慢だ。
それより、先輩からいただいたイチゴジャムパンを食べねば……もったいなさすぎる。
俺もブルブル震える手でパンを口へ運んでいく。
一口含むと……涙が出るほど美味かった。
「…………ッ」
「ちょ、愁くん……なんで泣いてるの!?」
「美味すぎるからです。こんな美味しいパンを食べたのは人生で初めてですよ」
「そ、それは良かった。じゃあ、約束通りライン交換しよっか」
「やった……!」
先輩がスマホを取り出して電話番号を教えてくれた。……まさかの電話番号もゲット! 番号を経由してラインも登録完了。
これでいつでも先輩と連絡が取れるようになった。
やった……先輩といつでもメッセージできるとか毎日が楽しくなるぞ!
「愁くんの登録も完了したよ」
「ありがとうございます、先輩。……わ、先輩、日記つけてるんですね」
ラインには、ブログみたいな日記の機能がある。
そこには先輩のプライベートが綴られていた。
「ちょ……恥ずかしいから見ないで!」
「いやぁ、公開設定になっていますし……」
「うぅ……いいけど、面白くないよ?」
俺は先輩の日記をサラッと読んでみた。
……ほとんど、猫の写真だった。
「先輩、猫飼ってるんですね」
「可愛いでしょ~」
「美猫っすね。今度触らせてくださいよ」
「うん、機会あったらね」
他にも何か書かれているようだけど……ん、これは例のコスプレか!
先輩のシスター服だ。
頭にはベールを被り、胸の強調が凄まじい。スリットから大胆にふとももを露出しているし……これは神々しいというか、エロすぎる。
「先輩、コスプレ写真も載せているんですね」
「こ、ここでは恥ずかしすぎるから見ちゃダメ!!」
俺のスマホを奪い取ろうとする涙目の先輩。めちゃくちゃ恥ずかしいらしい。
「もう見ないですよ、安心してください」
「約束だよ。学校では日記の閲覧をしないこと!」
「はい、約束します」
でも日記を見せて貰えるとか、先輩のことがもっと知れて俺は嬉しい。
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