第75輝 白青
彼女に初めて会った時から、普通の魔法少女じゃないと思っていた。ボク自身、この地区の魔法少女の人達ぐらいしか魔法少女との面識がないから、ボクが思う普通っていうのがどこまで信用できるのかは分からないけど。それでも異質だと思わせる雰囲気が彼女にはあった。
このボクの直感は、あながち間違いじゃなかったようで。
魔法少女の心と同義の
そして、変身の時の言葉と、この苦しみ様も。
異常だ。魔法少女に変身するだけで、あそこまで激しく苦しむことは無い。何か普通の魔法少女と異なる原理で変身しているんじゃないだろうか。そのせいであれだけ変身の時に苦しんでいたり、魔晶石を武器として扱えたりするのでは?
───沙紅にクレイアンブロイドの願いは復讐だと聞いている。ボクも同じだ。ボクの大事な家族を殺したアイツを殺すために、ボクは魔法少女になったのだから。
それでも、沙紅と関わるうちに、
復讐は諦めてない。でも、目の前にアイツが現れる、その時が来るまでは復讐以外の事を考えてもいいんだと、そう思うようになった。
だけど、クレイアンブロイドはどうだ? 願いは復讐だと言い、魔法少女の敵じゃないが魔法省は気に入らないと言った彼女はどうだ?
───まるで昔の、沙紅と出会う前の自分を見ているようで虫唾が走る。
復讐のためなら自分のことは顧みず、ただそれを成すためだけの道具としか自分を捉えていない。───そうじゃなければ、あんな苦しみながらする変身なんて何度もしないだろう。多分、あの苦しみは今回だけのものじゃないだろうから。
それに、ボクを拾ってくれた魔法省を悪く言ったこともまだ許してない。
───だから、目の前の叫びを無視して、ただ静かに、覚悟を決めるように。
「魔法少女リーテタンザナイト。護るため、我が刄を振るう……!」
君
復讐だけに囚われたボクを救ってくれた沙紅みたいなことは出来ないけど、せめて、息苦しい復讐という呪縛が和らぐように祈りながら。
◇
「来い───『
俺の願いが一気に体を駆け巡る。次いで視界を魔力で強化し、映る全ての時の流れがやや遅く、そして鮮明にする。
瞬間、構えた宝石剣に急接近してきたリーテの刀が接触した。
重い衝撃を体と願いで耐えつつ、近づいてきたリーテの様子を伺う。
相変わらず無愛想で不機嫌そうな顔はそのままで俺と
そうやって観察している俺の目線に気がついたのか、リーテはより不機嫌そうに顔を歪めてから俺の腹へ足を伸ばし、勢いのまま間合いをとった。
思いっきり鳩尾蹴ろうとしなくてもいいじゃん……当たるギリギリで、願いを使って体を後ろに引っ張ったからいいけどさけどさ。
最初の距離とまでは行かないが、それなりに離れたリーテを見て、俺は少し体勢を低くする。───今度はこちらから行くぞと、そう目で訴えながら。
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