第15輝 光速
「あそこか……!」
街を破壊する魔法が暴れるみたいに放たれていたおかげで、魔法少女とSOのいる方向が分かった。
民家の屋根を蹴りそちらの方へ力を込めて跳躍。さっき吹っ飛んだ時よりは制御出来ている。───もう軽くジャンプしただけで悲鳴をあげるようなマヌケな真似はしない。
「すごい暴れっぷりですね」
「またSOでも現れたのか? 元々それとも2体現れていた?」
少なくとも俺の事を襲ったあのカニみたいなSOはあんな魔法は使っていなかった。あいつが使っていたのは空間を切る斬撃と炎の斬撃、その2つだけだった。あんな直接破壊する魔法は使ってなかったはずだ。
「いえ、あの魔法は魔法少女のものですね」
「は?」
何故魔法少女が街を破壊するような魔法を放つのか。───まさか狂ったか?
「とりあえず急ごう。少し飛ばすぞ」
「了解です」
足場になりそうな住宅に着地して今度は思いっきりジャンプする。白猫は……よし、振り落とされてないな。
同じ力加減で数回跳躍を繰り返す。すると戦場になっている場所が見えてきた。
奥に見えるのは俺が殺されかけたSOだ。間違いない。蟹のような見た目で、右手と左手それぞれ別の魔法を纏っている。
その手前には鎌を振り回す魔法少女が。
確か、魔法少女リリーアメシストだったか。魔法省の資料に載っていた気がする。そんな彼女が街のことなど気にしていないかのようにSOに魔法を放っている。───彼女の魔法は『魔法を打ち消す魔法』だったはず……なぜ物理的に破壊する魔法を放っている……?
「セイ、あの魔法少女の後ろの方を見てください」
「後ろ……?」
いつの間にか肩から降りていた白猫が前足で指した方向に目線を向けると、何かが突っ込んだように家が崩れている。あそこがどうしたのだろうか。
「目に魔力を集中させてみて下さい」
「目に? ってか魔力を集中ってどうやってやるんだよ」
「さっきの跳躍と同じ感覚です。意識して見ようとすれば自然と魔力は集中するはずです」
何を言ってるのかいまいち掴めないが、目に意識を向けながら、崩れた住宅の瓦礫を視る。
するとポワッと何かが光った気がした。あれは───
「魔力です。あの魔法少女とは別の魔法少女のものですね」
「つまり?」
「恐らく、瓦礫に巻き込まれてしまっているんでしょう。動く気配がないことを見るに、意識がないのかもしれませ───セイ?!」
それを聞いた瞬間、俺の体は自然と瓦礫の方へと向かっていた。
あそこにいてはSOとリリーアメシストの戦いに巻き込まれてしまう。せめて回復系の魔法を使って退避させるか、最悪俺が安全なところまで運ばなければいけない。───幸い、俺が回復魔法を使えるのは何となくわかる。魔法少女になると使える魔法がわかるようになるっていうご都合主義的仕様の噂は本当だったらしい。
俺の属性は……光、ね。なかなか珍しい属性を引いたらしい。
魔法少女の属性はその性格などに由来し、多種多様、千差万別だ。俺の属性が光ってことは自分が思ってるより俺は聖人君子だったってことか? いや、ないな。
っと、そんなこと言ってる場合じゃなかった。
瓦礫の前に着地し、中の様子を魔力を纏った視界を使いながら探る。───見つけた。あれか。
少し盛り上がった瓦礫の隙間から揺らめく魔力を見つけた。
瓦礫が邪魔だ。まずはあれを退けるところからか。
使えそうな魔法は───無さそうだな。物理的に干渉できるような魔法は光属性にはない。
仕方がない、地道に退かすか。
───瓦礫のひとつを掴み、横にどかそうとした時、背後からストーブを直で当てられたような、そんな感覚が襲ってきた。
「セイ! SOの魔法です! 早く待避を!」
「まじかよっ!?」
後ろから、追ってきた白猫に警告され、ようやく先程の感覚の正体に気づく。
急いで埋もれてしまっている魔法少女を瓦礫から出そうと次の瓦礫へ手を伸ばす───寸前で、直前まで破壊の魔法を振り回していたリリーアメシストのことが頭をよぎった。
「『光よ癒せ』!」
1つ瓦礫をどかした時に見えた、汚れた白い衣装の方に回復魔法を放ち、白猫を置き去りにSOとリリーアメシストの方へ跳躍する。
跳躍した時に、魔法少女1人どころか民家1軒ぐらい余裕で飲み込んでしまいそうな魔法を構えるカニのSOと、その前で放心したように動かないリリーアメシストの姿を認識する。
「間に合わっ───」
ここからじゃ……いや、一瞬であそこに行ける魔法がある。文字通り、光の速さで。
使用するだけで魔力の殆どを喰われるが、使うだけで場面をひっくり返せる可能性のある、魔法少女にとっての必殺技───"願いの魔法"。それが、今使えるって言うのか?
「俺を……俺をあそこまで届けろ!」
魔法少女になって直ぐに願いの魔法が使えるなんて聞いた事がない。ないが、使えるなら使わせてもらう。目の前の魔法少女を守るためにッ!
「『
願いの魔法がその名を唱えたことで構築されていく。そして構築が終了し、その行使が始まった瞬間、一気に魔力が無くなった感覚の後、俺は光を置き去りにした。
加速していく視界の中、SOが貯めていた魔法をリリーアメシストに向けて放ったのが見えた。
「させるかぁぁぁあぁぁああああ!!!!」
声すら追い越して、魔法とリリーアメシストの間に体を割り込む。
光になりながらも背中から抜いていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます