学校の怪談

美緒

第1話 

「先生さよーならー」

「さようなら」


 ある夏の日、スミレヶ丘小学校で終業式が行われていた。小学生5年生のせいはお道具箱をガチャガチャ言わせながら家路を急いでいた。

 なぜなら、明日から祖父母のいるさざなみ島へ遊びに行くからだ。他の家族は忙しいので晴だけ先に行くのだ。これは初めてのことだった。

 さざなみ島は小さな島だ。子ども少ない。そんな中で晴が一緒に遊ぶのはりく風太ふうた春香はるか美月みづき、ナズナだ。

 5人とも、夏休みや正月に島を訪れる晴を歓迎してくれ、晴はいつも会えることを楽しみにしていた。


「ただいま!」

「おかえりー。手洗ったらおやつあるよ。」

「洗ってくる!」


 急いで手を洗い、ダイニングへ向かう。今日はオレンジジュースとどら焼きだった。


「ん」


 母の千里が手を出す。


「はい」


 晴は通知表を渡すとどら焼きをほうばった。


「体育頑張ったんだね。」

「うん。」


 せいの成績は体育以外は普通だ。特に良くもなく悪くもない。まあまあだ。

 テレビからお昼のニュースが流れている。


「さざなみ島のさざなみ小学校の裏手に遺跡が発掘されました…」


 晴が明日から行くさざなみ島の話だ。


「母さん、さざなみ島の話してる。」

「あらほんと?」


 母が見た時には画面はもう切り替わっていた。


 しばらくすると、姉の美空みそらが帰ってきた。


「ただいま」


 美空は高校生だ。今日も朝から剣道部の練習に行き帰ってきたところである。


「おかえり。」

「ただいまーシャワー浴びてくる。」


 美空は階段を上がって自分の部屋へ向かった。

 おやつを食べ終わった晴は宿題をし始める。島では目一杯遊びたいからだ。

 シャワーを浴びた美空がアイスを食べながらリビングへやってきた。


「晴、もう宿題やってんの?」

「うん!早く終わらせてあいつらと遊びたいからな!」

「ふーん。」

「海で泳いだり、山で秘密基地を作ったりするんだ。」


 さざなみ島での楽しい日々を想像する晴の顔はニヤけていた。




 夜になると、父の晃司郎も帰ってきた。


せい、楽しみかー?」

「うん!あいつらといっぱい遊ぶんだ!」

「そっかそっか。じゃあ早く寝ないとな。」

「うん!」


 いつも早寝早起きの晴だが、今日はいつもより早めに寝ることにした。




 青い空、白い海、緑の山、晴はさざなみ島で作った秘密基地にいた。


「きゅう」

「きゅー太」


 きゅー太は去年、仲良くなった狐だ。仲良くなったと言っても、基地に行くとギリギリ触れない距離まで近づいてきてきて、一緒にいるだけだったが、晴はもう一人の仲間のように思っている。


 きゅー太は、晴をじっと見てから振り返って歩き出した。まるでついてこいと言っているようだ。友だちの誘いに迷わずついていく晴。

 ついた先はさざなみ小学校だった。


「きゅう」


 きゅー太が鼻先で示した方向には開けっぱなしの扉のお社があった。


 ー取り返してー


 頭に声が響く。


「何を?」


 聞き返したが周りはどんどん明るくなり声は聞こえなくなった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る