快楽の器
空っぽの無能
人のためならず
誰でもいいから自分を見てほしい。そんな思いは形を変え、歪みに歪み、快楽の器に罅を入れる。
優秀さをアピールして注目を浴びて自分を見つめるあらゆる視線に快楽を得ることは、正常であるのだろう。じゃあ愚鈍さをアピールして、呆れと嘲笑と蔑みの視線を集め、自分に集まるあらゆる悪意によって自らの存在認知を図ることは正常な思いだろうか。
自分が優秀だと思ったことはない。何をやっても人より早くできる代わりに、何をやっても人より突出することはなかった。行動力もそのうち伴わなくなり、自らが愚鈍であることを表現するほうが遥かに簡単であると知ってしまった。
愚鈍でちんけで阿呆の自分をアピールしてただ構ってほしかった。ただ自分の存在を認識していて欲しかった。しかし、優秀な人は見捨てられないものだろうが、愚か者は捨て去ることが簡単なのだということに終始気付かなかったのだ。
気づいた時には家族の心は離れ、気づいた時には友人がいなくなり、気づいた時には自分には何も残っていなかった。承認は正しくされなければならないのだ。自分の財失わず長い
私は長く承認を得るために、存在を保つために、自分が最底辺だと感じるが故に。
ありとあらゆる人をまず尊敬する。ありとあらゆる人を認める。ありとあらゆる人を受け入れる。自分が見捨てられ、欲求が満たされないことを怖がる故に。
ありとあらゆる快楽のために、まずこの罅を塞がなくてはならない。人心に入り込み、周囲の存在を保つことは自分を見てくれる存在を保つことにつながる。人を助ける仕事をしたい。自分が見捨てられないために。
過去未来暗闇しかないことはきっとなかった。暗闇しかないのは目を自分で覆っていたから。愚鈍な自分を捨て去るためには、自分が他者に植えてきた自分の評価を一切合切掃除しなくてはならないのだ。これがまさしく因果応報、自業自得。善い行いをすれば良い結果が、悪い行いをすればそれ相応の評価を得られる。
大きな快楽を得るためには、器を守らねばならないのだ。ありとあらゆる刺激から。ありとあらゆる自身の欲から。
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