華、毒の泉に溺れる
虹渡るカピバラ
第1話薄幸令嬢婚約破棄され売られる
魔法王国・ドルセイド、公爵令嬢と第二王子の結婚式を一月後に控えたある日のこと。
「マルガリータ・オデッセイ嬢、お前と王子の婚約は破棄する。異論は認めん、高貴なる一族に娼婦の血が入るなど悍ましい」
王妃は淡々とマルガリータにそう告げた、マルガリータはわかりましたと答えるしかなかった。
それから、自宅に帰れば「金食い虫はいらない」と言われ追い出された上高級娼館に売り飛ばされた。
それが、マルガリータの転落人生の始まりだった。
…
とはいえ、娼館の姐さん達は王妃の態度やマルガリータの家族に対して酷く怒った。
だが、マルガリータは早くまとまったお金を手に入れなければいけなかった、それは愛する姉のため。
王家から公爵家に莫大な慰謝料が請求されているからだ、でもここは高級娼館。
お客は処女など求めていないはず、マルガリータは女将さんに頼み込み処女というのを隠して欲しいと言った。
「でも、慰謝料ねぇ。なんか、引っかかるわ。」
「お願いします、慰謝料を払わないとお姉様の婚姻も取り消しになるんです。」
「落ち着きな、大丈夫。お話だけでもいいお客を当ててあげるから、」
女将さんはマルガリータの頭を撫でて微笑んだ。
「新入りか?」
40手前であろう顔の整った男は、マルガリータを食い入るように見る。
「いいね、女将。その子をいただこうか、よかったらそのまま見受けする。金も相談に乗る、いいだろう?」
「侯爵様、少し。」
女将と男が相談室に入っていくのを見て姐さん達が慌てた、「毒泉」と悪名高い侯爵が相手だからだ。
「マルガリータ、逃げな。」
「そうよ、あんたの若さだったらどこでも働けるわよ。」
「でも、明後日までにお金を渡さないと」
姐さん方は「クソ王族と毒親め」と悪態をついた。
「慰謝料は俺が払っておいてやろう、怖がらなくても無理強いはしない。おいで、」
「お姉様がた、女将様、ありがとうございました。」
マルガリータはこれから何をされるのか、あの優しい元婚約者にもされたことのないなにか得体の知れないことに思いを馳せ顔を真っ青にした。
そして、なにより嘘をついた罪悪感がその身を蝕んでいく。
「あの侯爵様、私。処女なんです、嘘をついて申し訳ありません。でも、女将様もお姉様方も悪くないんです、だから」
侯爵はキョトンとした顔してそれから笑った。
「ああ、大丈夫。女将からは聞いてる、というか大丈夫か。顔真っ青だぞ、」
「へ?あ、だ、大丈夫で…」
マルガリータは馬車に乗る直前で顔面蒼白になって倒れた、気が遠くなる中で大好きな姉の声が聞こえた気がした。
目を開けることができずマルガリータは意識を手放した。
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