オリオンの転星人

無駄職人間

プロローグ『宇宙の彼方』


 暗闇、そしてそらのどこかで光が現れては消えていった。ここにいると、私が今どこにいるのか分らなくなってしまう。


 暗闇の中での一瞬の輝きの中で同胞の命が消えていくのを理解するのに、時間は掛からなかった。


 突如、正面を横切っていった一機の敵戦闘機が視界に捉えた。


 まだ、重力に縛られている翼状機構をした航空機で戦っている。


 まさに宇宙の基準からしたら旧石器時代の武器で戦っているようなモノであった。


 なのに我々はそんな取るに足らない下等生物に宇宙が滅ぼされようとしていた。


 先程の戦闘機が方向転換し、当機の背後をとった。

 敵機のバルカン砲が本機に向って発砲する。


 当機はすぐに敵の弾道を予測し回避するが、敵機も必死に追いかけてくる。


 敵の弾道を避ける度に体と当機に急激な重力負荷が襲い、意識が飛びそうになる。


 しかし、敵もここで逃せば、彼らの故郷と自身の生命に危険が迫るのを恐れているのであろう。


 こちらが何度も宇宙空間でのスラローム操作で攻撃をかわしていると、敵のバルカン砲が生み出す光弾が視界の端から消えた。


 敵機の弾薬切れか、光の速さで敵機を振り切った結果なのか理由は分らない。


 そう逃げている間に、自分がどっちを向いているのか分らなくなっていた。


 空間認識が定まらず、どこにいるのかすら特定することが出来なかった。


 何もない暗闇の宙の中でふと一瞬だけ、青い球体が見えた。


 当機を青い球体に方向を直すと、そこは目的地であり、宇宙の敵が住まう惑星が見えた。


 衛星軌道上から惑星の引力によって、次第に当機は星へと引き寄せられる。


「行かせてたまるかッ!」


 誰かのセリフと共に背後で大きな衝撃波が走った。

 先程の敵機が当機に衝突したのだ。敵機は既にボロボロで、このまま敵の惑星に向けて降下すれば大気圏で燃え尽きるであろう。


 しかし、それは当機も同じ。敵機のエンジンがオーバーロード寸前にまでのブーストをかけている所為で大気圏突破に必要な減速も出来ず、敵機もろとも当機も大気圏で燃え尽きてしまう。


 次第に当機の周りが赤く燃え上がり、熱せられていくのが見て分る。


 後ろの敵機を振り落とそうと後方に視線を移すと、コックピット越しに殲滅対象の敵性生物と目が合った。


 頭部を光学機器が搭載した装備品で覆い、口元には彼らの生命維持に必要な元素を送り込むマスク。


 そして、我々とは異なる形状をした眼に該当する二つの器官がこっちら睨んでいた。


 我々のような存在は、瞳だけで感情を表すのは不可能ではあるが、彼ら敵性生物にはそれが表現出来る。


 その瞳はまるで私に対して、化け物を見るような目つきであった。


 ついに互いの機体が耐えきれず、爆炎と共に宙に崩壊していく。


 殲滅対象の“地球”を前にして・・・・・・。


 炎と共に消えていく中で眼の前が見たことのない光に包まれていく。


 それは熱気とは違う、暖かさがあった。

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