幕間1 Decay


「陛下、陛下!」


「何事だ」


「東の塔に火がつきました。もうおしまいでございます」


「……消火装置はどうした?」


「あれは先の大地震の影響で全く使い物になりません」


「雨は……あてにならないな。もう何ヶ月も降っていない」


「ああ、第一コアが壊れてはもうどうにもなりません。あんなことがなければこの大火事

だって起こらなかったでしょうに」


「陛下、陛下!」


「何事だ」


「神子様からのお言葉がございます」


「無駄だ、もう遅い。それに彼女だって……」


「……」


「もういい、お前達は逃げろ」


「ですが陛下!」


「お前達までこの国と果てる必要はないんだ。だから……逃げて、生きてくれ」


「ですが陛下……」


「これは命令だ。恐らく最後の、な」


「……はい。失礼いたします」


(……)


(……これが、私の故郷なのか。跡形もなく滅び、朽ちていくこれが)


(いかんな、情が湧きそうだ)


(もし、このまま生きていられたら)


「いや……」


(この忌まわしき系譜を断ち切らねば)


(それが最期の、王としての役目なら)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る