第16話 闇夜の会敵
「うう、ちょっと熱中し過ぎたかなぁ」
10mほどの大きさを持ったイノシシ型の魔獣、魔猪を1時間にわたる激闘の末倒し、そろそろ帰るかとクロード神父から借りた懐中時計で時間を確認すると既に日付が変わり、時刻は12時27分を指し示していた。
「そう言えば……戦ってる内に結構奥まで入り込みすぎたかな? 少し霧が出てるし、ここら辺ってたぶんプロメテウスさんに会った洞窟がある辺りだよね」
何となく見覚えがある地形を眺めながら、私はクロード神父に貰ったレベル上げマップを『
(あそこに見える山がマップのこの辺りだから……あっ! やっぱりここからは魔獣のレベルが一気に上がって危険だから近付くなって書いてある! でも、この『濃霧の森』の入り口付近はほとんど魔獣が発生しないって書いてあるし、休憩ついでに上がったステータスの確認と新たに習得した【特殊】スキルで覚えた魔法を試す余裕は有るよね)
そう考えた私は再度周囲に視線を巡らせ、近くに腰を下ろすのに手頃な大きさの岩を見付けたので拠点に戻る前に一旦そこで休憩することにした。
「さて、それじゃあさっきのレベルアップでどれだけステータスが伸びたか確認しますか!」
アイリス Lv.55(次のレベルまで4,320)
(能力情報)属性:星・人 疲労度:― 疲労補正:0%
適性武器:剣 適性クラス:
体力:267/426 魔力:562/2,100 技巧値:178/200
攻撃力:494(194)+2,750 魔法力:1,410(1,110)+1,650
防御力:510(210)+550 俊敏力:592(292)
(装備)
武器:神刀『三日月』
防具:布の服、革の靴
アクセサリー:
(状態)
【疲労無効】【全状態異常無効】【CP自動回復】
(習得魔法)
(保有スキル)
【特殊】
【パッシブ】
縮地 Lv.5/5
不屈
【戦技】
ざっと今のステータスを確認し、私は思わず頬が緩むのを感じる。
今日1日で私は3つレベルを上げているが、この3レベル上げるのに集めた経験値はざっと12,000程だ。
そして、8月から12月までのこの4ヶ月間で28レベル上げるのに6万ほど経験値を稼いだ事を考えると、私はこのたった1日だけでほとんど1月に稼いだ経験値と変わらない経験値を稼いだ事になるのだ。
(まだまだここら辺に出て来る魔獣の方が私よりレベルが上だから入る経験値に補正も入らないし、この勢いだったら明後日の帰る時間までにあと5レベルくらいいけるかも!)
やっぱりレベルと言う分かりやすい数字で頑張りが目に見えるとやる気が上がるなと考えた後、今度は新たに習得した【特殊】スキル『
(名前的に幻覚で敵を欺くタイプの技かな? 消費魔力が凄く多いけど……『
拠点に戻るために『
すると、どうやらこの魔法は『
(自分にも幻覚を見せる…わけ無いか。たぶん、幻覚で姿を消したりとかかな? 流石にレベルが低くて完全に姿を消せないで、森だからって保護色で全身が迷彩柄になったりしないよね?)
そんな若干の不安を覚えながらも、私は頭に浮かんだ詠唱の文言を口にした。
「幻影よ、その力により世界の全てを欺け! 『
魔法を発動した瞬間、眩い光が辺りを照らす。
そして――
「……あれ? 何も、起こらない?」
特にこれと言って私の体に変化が起こることは無かった。
(もしかして、姿が消えてるけど私には自分の姿が見える仕様だから変化が分からない、とか? うーん、何かの魔法効果が継続してる気配はするし、精霊の泉まで戻った時も効果が続いていたら水面に映して確認しようかなぁ)
そんな事を考えながら、そろそろ拠点のある精霊の泉まで戻ろうと『
「なあ、さっき魔力光が見えたのはあそこら辺だったよな!」
「ちょっと、バカ! ここら辺の魔獣は私達じゃ勝てないくらい強いって教えたじゃない! 1人で勝手に突っ走らないで!」
「大丈夫だって。さっきも俺達の偽物に勝ったし、あの爺さんから強力なスキルや武器ももらったんだから平気だって」
「アレは簡単な攻略法を私が教えたおかげでしょ! ここら辺の魔獣はあんな簡単に行かないんだからね!!」
それは、まだ声変わりする前の幼い少年と同じく幼さを感じさせる少女の声だった。
そして、突然の事態にテンパってしまい次の行動を起こせないでいた私の目の前に、子供と思われる小さな人影が2つ現れた。
その2人は130前後の身長から私とさほど変わらない年齢であろう事は推測出来るのだが、顔と体型を隠すように不思議な装飾が施されたローブを羽織っているため、その顔立ちや適性属性を判別するための髪色を窺う事は出来なかった。
「なっ! 何だこいつ!?」
私の姿を見付けた瞬間、前を歩いていた少年だと思われる方がそう声を上げて後ろの少女と思われる方を庇うように数歩下がり、腰のベルトに下げた袋から絶対にその中に入らないだろとツッコミたくなるような立派な剣(明らかに見た目から強うそうなやつ)を取り出した。
「あの髪色…もしかして、私達を消しに来た天使かも知れないわ!」
少女もそう言葉を返しながら、突如空間に空いた穴(と言うか明らかに『
(あの武器、私の神刀『三日月』と同じような風格だしかなり強い武器だよね!? それにあのローブ……確か、前に武具商店で見た数百万の値段で売ってあった装備者の素性やステータスを看破出来なくする装備だったはず!)
それだけ高価な装備を準備出来、身長などの見た目から私とさほど変わらない年齢である事が推測出来る男女のペアなど、思い当たる人物は1組しかいない。
(この2人、たぶんユリ――)
「おい、ユ…イブ! 絶対俺より前に出るんじゃねえぞ!」
「当たり前でしょ、アダム! 前衛を差し置いて前に出る後衛が何処にいるのよ! しっかりとサポートはしてあげるから一撃でやられないでよね!」
どうやら全然私が知らない2人組だったらしい。
その、アダムとイブと言う少年少女は直ぐさま前衛と後衛に分かれると、私と対話する気など微塵も感じさせずに戦闘態勢に入る。
そのため、咄嗟に私も身を守るために神刀『三日月』を構えて応戦の構えを取ってしまった事で対話による平和的解決への道が閉ざされてしまった。
(今一瞬、アダムくんの体を光が包んで感じるプレッシャーが増大したから何らかのバフを掛けたのかな? それに、一瞬私に闇が纏わり付いて能力低下の影響が出たから、間違い無くどちらかが闇魔力の適性持ちで『
因みに、レベル上げを始めた最初の頃、私は【全状態異常無効】の影響で能力低下も防いでくれるものと思っていたが、どうやら能力低下のデバフは状態異常に含まれないようで普通に受けるらしい事を手痛いダメージと共に知ることが出来た。
(『
心の中で泣き言を漏らしながら、私はこの局面をどう乗り切るか高速で思考を巡らせるのだった。
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