ほころび
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
周囲には、今の桔梗と同じように息を切らせた仲間達。
一箇所で一塊になった『
あちこちに敵の一員が雑魚寝をしているが、それでも今なお数の優位は敵チームにあった。
『
しかし、それでもいつまで時間を稼げるか分からない。
相手はまだまだ戦える人員を残している。ざっと数えただけでもまだ四十人ほどいる。
——『
どれほどの大勢力を誇るグループが相手であっても、『
だが、それはメンバー個々の腕力だけでもたらした結果ではない。地形、戦術、攻撃方法、心理、情報運用……あらゆる要素を効率良く運用して得た結果だ。
今回のこの抗争は、主導権を完全に相手に奪われたまま進んでしまっていた。数にモノを言わせた人海戦術に持ち込まれたのだ。
絶体絶命。
そんな言葉が頭に浮かんだが、桔梗はそれを振り払う。
指揮官である自分に絶望して思考停止することは許されない。そんなふうになるくらいなら、少しでも状況を良い方向へ動かすことを考えろ。
「ぐはっ!」
とうとう、倒れたメンバーが一人出てしまった。
そのことに心を痛めたいのを我慢して桔梗は考える。脳が汗をかくくらい考える。
「う、うわ! うわああああああ!!」
松尾が三人がかりで袋叩きにされ始める。
それでも思考に徹しようとするが、どうしても仲間のことに意識を吸い取られてしまいそうになる。
松尾を助けるために、一塊の内側で休んでいたメンバーが前へ出て、袋叩きにしていた敵数人を追い払う。
「やめなさい! 出るな!!」
桔梗は思いとは裏腹の指令を叫ぶ。
だが、桔梗の憂慮が現実化してしまった。助けに出てきたメンバーもまた、松尾と同じように地面に転がされ、袋叩きにあい始めた。
ただでさえ悪い戦況が、さらに悪化する音を聞いた。
「総大将っ……!」
隣に立つ
(……畜生っ!)
桔梗は決して表には出さず、心中で毒づいた。
そうしている間にも、戦況はさらに悪化している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます