第6話 フラフレの寝起きは、「ふがぁ」から始まる

 今夜も念のために医務室で寝るようにと、フォルスト陛下に命じられた。

 窮屈な思いをさせてすまないと謝られたのだが、意味がわからなかった。


 こんなにふっかふかのベッドというもので寝て良いのだろうか。

 医務室って今まで住んでいた地下牢より広いし、空気も良いし、居心地だって最高なんだけれどなぁ。


 医務室のベッドに横になると、すぐに眠気に襲われた。


「ふにふに……。この布団っていうものもフカフカ、もふもふ。……幸せ」


 枕をギュッと抱きしめながら、うつ伏せになった。

 今度は足をバタバタしながら今日食べたご馳走を思い出す。


「フォレスト陛下は私の食べ方を見て呆れていたんだろうなぁ。フォークとナイフの使い方、しっかり身につけないと!」


 今まで何の教養も学ぶ機会がなかった。このままでは私のような常識知らず、どこへ行っても恥をかいてしまうだろう。

 できる限り、勉強しなきゃなぁ。

 それにしてもこのベッドは魔法でもかけられているようだ。

 どんどん睡魔が襲ってくる。

 いつの間にか私はグッスリと眠っていた。



「ふがぁー……?」


 どこで寝ても、私の寝起きは極端に情けないことを自覚している。

 だが、今日は今までの寝起きとは違い、起きた瞬間に頭がスッキリ爽やか状態だ。

 フカフカもふもふベッドのおかげかな。


 天国のようなベッドとの別れを惜しみながらゆっくりと両足を床につける。

 ちょうどそのタイミングで、医務室のドアが開いた。


「おはようございます、フラフレ様。朝食の準備が整いましたのでいつでもどうぞ」


 黒い長めのワンピースをベースに、エプロンと蝶ネクタイ。

 おそらくメイドさんだ。

 私と同い年くらいで、しかも可愛い。

 リバーサイド王国って美男美女しかいないの?


「おはようございまふ……。えぇと、私の名前を知っているということは──」

「申し遅れました。フラフレ様がご滞在の間、身の回りのお世話を担当するメイド、アクアと申します。ふつつか者ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします」


 さすがに私への待遇が良すぎないか!?

 聖女だとは知らないはずだし、身体も服もボロボロでは女としての魅力すらない。

 どうしてここまでしてくれるのか……。


──ぐぅぅうう!

 昨日満腹になるまで食べさせてもらったのに、もうお腹が空いている。


「あ……」

「本日のご予定ですが、フラフレ様にはいくつかやっていただくことがございます。まずはお腹を満足させましょう」

「は、はい。ありがとうございます」


 アクアさんはニコリと微笑みながら、再び医務室のドアを開けて私を誘導する。

 こんなおもてなしを受けて良いのかどうかとまどいつつも、空腹に負けてしまいアクアさんについていった。

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