第21話 素晴らしき愛をもう一度 楽しさと別れ2

 ぐるぐる回る

 くるくる回る

 回って落ちると

 迷路があった


 部屋をよく見ると、もう一つ扉があるのに気付いた。特に行くとこも無いので開けて進んでみる。するとそこはコンクリートの部屋だった。


 中央には先程と同じでテーブルがあり、上にはやっぱり紙が置いてある。それを手に取って読んでみる。


 【問題。1+1はな~んだ】


 簡単な問題だ。2だ。


 いや、でも小学生の時は田んぼの田なんて言われて冷やかされたりもした。もしかしたら、そういう変わった答えを聞かれているのかもしれない。


 【ぶー、時間切れー】


 どこからともなくブザーが鳴って、意地悪な声にはずれを言い渡される。


 すると、足元が急に無くなって、黒い闇の中に落とされてしまった。


 ぐるぐる回る

 くるくる回る

 回って落ちると

 迷路があった


 それは深い深い闇の中。一つのライトが美樹を照らして、周りを同級生が取り囲んでいる。


「ブースブース」

「デーブデーブ」

「おやなしめー」


 美樹は何も返せない。


「お前は地味なんだよ」

「死ねお前」

「ちょっと臭いんだけど」

「やめてっ」


 美樹は声に出して抵抗してみる。


「あいつ地味だよね」

「なんで生きてんの、あいつ」

「本当、いなくなっちゃえば良いのに」


 美樹はこの場を離れたくて上履きを履いた。


「いたっ」


 と、画ビョウが入っている。


「画ビョウ踏んだ、ざまぁ」

「教科書も落書きしといたよ」

「机もバッチしだよ」

「「「あはっはっはっはっ、あはっはっはっはっ」」」


 美樹は画ビョウを取って駆け出した。すると彼らは見えなくなった。


「あんた調子乗りすぎ」

「咲さん」


 しかし、今度は咲が出てくる。


「真面目で、患者からの信頼もあって、優しい。聖人君子にでもなったつもり」

「そんな。そんなことないです」


 美樹は否定する。


「ムカつくんだよ」


 しかし咲は止まらなかった。


「そんなこと言われても」


 美樹はいたたまれない気持ちになる。


「美樹さんが虐める」


 すると今度は逆側から仙人が出てくる。


「秀彦さん」


 驚いて振り向き美樹。


「わしゃ秀彦じゃないと言うとろうが」


 と、秀彦という言葉に反応して怒鳴り散らす仙人。


「ごめんなさい」


 美樹はしゅんとなってしまう。


「美樹さんなんて嫌いじゃ」

「そんな」


 美樹は信じられないというような眼差しで仙人を見た。


「ざまぁみろ」


 咲が追い打ちを掛ける。


「私は、ただ真面目に。真摯に仕事をして、たくさんの人の心の支えになってーー」

「現実みろっつーの」


 咲が遮る。


「違う、違う、違う。なんで、なんで、なんで」


 美樹が頭を抱えてうずくまった。


「潰れちまえ」


 その言葉が最後に美樹に刺さる。

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