ふわふわデトックスのちおしゃれ  完

朝香るか

第1話 癒しの極みへ

スーパー銭湯でリラックス

今どこにいますか?

彼氏からの電話にメール。

「絶対に2日で帰るから。心配しないでね」

返信しラインをオフ。

私、篠原涼しのはらりょうはリフレッシュ期間に入ります。


社会人同士で付き合ってます。最近、束縛激しくなってきてノーローゼ気味なんだよね。

友達と会うの禁止。

コンビニ行くのも許可制。

仕事も辞めさせられて今、婚約中。彼の希望は専業主婦なのだそう。

確かに彼の収入に文句はない。

だけど多少の自由も欲しい。

だから自由におしゃれして彼のもとに帰ってやるのだ。


いま29歳の私。化粧品会社のメイクの相談に乗る美容専門の接客。

職場のみんなは25を境にどんどん結婚して名字も変わっている。職場では混乱するからと通名とするのが暗黙の了解だ。

私はようやく結婚。なんとかかんとか30でできそうだ。

人間30年近く生き、労働をしていると筋肉が凝ったり謎の痛みが発生したりするもの。

そろそろメンテナンスをしていかないとね。

いつもは賃貸のお風呂でガス代と水道代を気にかけながら浴びている。

職業柄、メイクだけはきちんとするが、そろそろ本格的にハリやつやを与えないといけない年になった。

追い炊き機能のない物件なものだから30分以上入っていられない。ゆっくり待ったりなんて夢のまた夢。同棲始めたら彼名義の部屋になるんだろうな。

今日はネットで調べてきた高級感たっぷりのスーパー銭湯に来ている。



お風呂入ってジャグジー入る。腰刺激のジェット水流と足つぼを刺激する。ジェット水流にもまれて体がほぐれていく。

ミスト浴びて、サウナに入り、肺の中まで蒸気を取り込む。

っていっても私はあまりサウナが得意ではなくって3分もいないんだよ。


それでもその後入る水風呂が気持ちよくて、なんだか自然と笑えてくる。

10以上あるお風呂を堪能して脱水にならないうちに着替えを済ませる。

お水は飲んでもいいらしいので無料の水をいただきつつ次は身支度。

ドライヤーかけて

化粧水と乳液をつけて最低限の化粧をした。

「ツルツル」

おもわず声を上げてしまう。そして心なしかもちもちしている。

(ケアはしっかりしよう!!)

その後、漫画見て

提携しているらしいセラピー各種を受けれるだけ受けてみる。

リラックススペースに肌年齢を測定する機械がある。今の時期だけに消毒液も置いてあるし、2台ある機械は二つとも空いている。

「やってみるか」

肌につけて待つこと20秒。

レシート上になって印刷された結果は32歳。

お肌もお疲れ気味。よく眠って保湿をしっかりしましょう。

……機械にも注意されるレベルでひどいものだ。

アロマセラピーして

小顔施術してもらって

足つぼマッサージしてもらう。

ネイルしてもらう。癒しやわー


可愛いと評判のホテルにも宿泊予約できた。

扉を開けるとびっくりする。

部屋の絨毯からしてフカフカだ。


ソファーもベッドも

もふもふしている。

家のクッションではないけど備え付けのピンクのクッションに

抱きつき柔らかさに癒される。


ギューッと抱きつくと多少収縮はするが、ふっかふっかのまま。

それは最高級クッションだからかも。


フカフカ、まっふまっふして柔らかい。

だからかもしれない。触れていると安心する。


ギューッとする。

幸せがあふれていく。


しばらくすると私の心が暖かくなる。


穏やかになる。

涙があふれる。

無理なんてしていないつもりなのに。

大好きな人のそばに居られて幸せなはずなのに。

とめどなく何かがあふれて止まってくれない。

彼に会う前に

もっともっとずっと穏やかになれますように。

イライラしている自分も、美容にだらしない自分も憂鬱な顔をしている自分も彼に見せたくない。

彼の愛する私に戻してください。

「おやすみなさい」

彼に連絡せずに一日が終わった。



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