第75食 フィレ・コトレット・キュリー:日乃屋カレー 神田(C11)
神田駅近くの高架付近に位置し、長さ百メートルにも満たない〈神田ふれあい通り〉には飲食店が軒を連ねている。その中の一つが、アパホテル一階に在る〈APRON The Diner(エプロン・ザ・ダイナー)〉なのだが、十四時頃に、そのエプロン・ザ・ダイナーを後にした書き手は、その足でそのまま、そこから一分以内で移動できてしまう、同じ小道の端に位置している〈日乃屋・神田店〉に赴いたのであった。
ここまで書き手が既に訪れていた、関東のカレー・ブランドである日乃屋の店舗は、神田駅西口店、九段下店、お茶の水店の三軒で、この神田店で四軒目になるのだが、この神田店をもってして、神田カレー・スタンプラリーに参加している日乃屋をコンプリートした事になる。
今回の企画において四軒目の日乃屋だし、スタンプ・ラリー・コンプのための〈カレー店ハシゴ〉という戦略上、この日訪れた二軒目のカレー店という事もあって、日乃屋で食せるカレーの中でも最もシンプルなメニューである「日乃屋カレー」を、量少なめの「六分盛りカレー」にして、お腹に優しく食そう、そう書き手は考えていたのだが、店の前に至って、その入り口の扉に貼られていたメニューを見た瞬間、気持ちが揺らいでしまった。
その貼り紙にあった「復活」あるいは「期間限定」という文字を見て、煽られたような気持ちになった書き手は、結局、期間限定メニューである、未知の「ヘレカツカレー」を食べたくなってしまった。
せめて量は少なめに、と思ったのだが、店の券売機のメニュー一覧の中には、(多分)トッピングでヘレカツというボタンがなかったので、結局、書き手は普通のサイズの「ヘレカツカレー」を注文したのであった。
ハシゴ・カレーの場合、一軒目が軽くは絶対条件なのだが、二軒目は、多少重くても問題はあるまい、と思ったのだが、これは完全な〈思い込み〉で、先走って結論を言ってしまうと、店を出る時、書き手のお腹はパンパンになってしまっていた。
さて、ヘレカツカレーには、カレー・ソース以外に、カツにソースをかける。選択肢は「大阪(ソース)」か「名古屋(みそダレ)」の二択だったのだが、この日の書き手は、大阪の方を選択した。
書き手は、注文したヘレカツ・カレーの提供を待ちながら、店内に飾られている盾を眺めていた。この店「日乃屋カレー 神田」は、二〇一三年の第三回のグランプリ受賞店なのだ。
はたして、このグランプリ経験店は、いったいどのような「ヘレカツカレー」を書き手に味わわせてくれるのであろうか。
やがて、一番下に白米が敷かれ、白米の上に置かれた、大阪ソースがかかった三つのヘレカツの上に、たっぷりとカレー・ソースが掛けられたライス・カレーが、書き手の前に提供された。
まずは、未体験のヘレカツを一口齧ってみた。
あれっ!? これ、普通にヒレカツだよね?
それでは、ヘレカツとヒレカツって、いったい何が違うのであろう?
結論から言うと、ヒレもヘレも、フランス語の〈フィレ〉の事だ。
フィレとは、鶏肉のささ身や、三枚におろした魚肉の切り身にも、獣肉にも使う語で、要は、肉の切り身の事である。
このフランス語のフィレが、外来語として日本語訛りになったものが、ヒレやヘレで、関東では〈フィレ〉、関西では〈ヘレ〉と呼ぶらしい。
思えば、カツも、そもそもは、フランス語のコトレットが日本語訛りになったものである。
そう考えると、このヘレカツ・カレーは、フランス語風に言い直すと、〈フィレ・コトレット・キュリー〉となるのであろうか?
ちなみに、カレーは、フランス語では〈キュリー〉と発音するのだが、キュリー夫人とは全く関係ない事を最後に言い添えておこう。
〈訪問データ〉
日乃屋カレー 神田
C11
十一月七日・月曜日・十四時十五分
ヘレカツカレー:八八〇円(現金)
〈参考資料〉
「日乃屋カレー 神田」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、六十八ページ。
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