第065食 印度風の昏き物:ラホール 外神田店(B13)

 ラホールは、台東区と千代田区に三店舗、秋葉原店、御徒町店、外神田店の三店舗を展開しているカレー・ショップである。

 インドとの国境付近、パキスタン北部のパンジャーブ地方に〈ラホール〉という名の大都市があるのだが、台東区・千代田区にあるカレー・ショップの店名は、この南アジアの都市に由来しているのかもしれない。

 さて、都内三店舗のうち、千代田区の外神田店は、アキハバラのジャンク・ストリートがあるエリアに位置しているのだが、このアキハバラの外神田店が、「神田カレー街食べ歩きスタンプラリー」に参加している。


 ラホールは創業三十六年、つまり、一九八〇年代後半にまで遡る事ができる店だ。

 八〇年代というと、アキハバラが今のようなヲタク・カルチャーの街となる以前、つまり、ラホールは、電気街の頃からアキハバラを知っている店なのだ。


 この老舗カレー店独自のカレー・ルーの選択肢は三つ、店入口に置かれたボードの説明文やガイドブック、さらにはホームページに書かれている事をまとめると、それぞれのルーの特徴は以下のようになる。


 「日本風」カレーは、「小麦粉とルーに手間をかけた」「懐かしい味」で、その辛さは星一つ、「辛くなく甘くなく」、「日本の家庭的なとろみのあるカレー」との事であった。


 そして、本格的な「厳選したスパイスを最高の技術でブレンドした」「インド風」カレーの辛さが星三つで、「20種類以上のスパイスをベースに」した「『サラサラ』の」カレーで、日本風カレー、すなわち、「とろみのあるカレーに比べ低カロリー」とあった。

 日本風カレーとは違って、「小麦を使用していない」が故に、カロリーは控え目なのであろう。


 三つ目の「ブラック」の辛さは星三つ以上で、「インド風をベースに」、スパイス、例えば「ガーリックなどを加え」たカレーで、辛さも五段階で調整可能との事であった。

 つまり、ブラックは、スパイスをより強化したインド風カレーなのであろうか?


 この三つのカレー・ルーの選択肢に加え、外神田店のメニューには、チキン、野菜、カツ、カラ揚げ、メンチカツ、カニクリームコロッケ、ホウレン草、ビーフといった様々なトッピングの選択肢がある。ちなみに、ドライカレーというメニューさえあった。


 同じトッピングにしても、日本風やインド風に比べて、ブラックの方が、基本プラス〈五〇円〉なのだが、このプラスの料金が、インド風に加えられたスパイスの分の値段で、さらに、課金すれば「100辛」まで辛くできるそうだ。


 必ずしも、料金の高さが旨さという分けではないが、日本風やインド風は他店でも類似のものを食べられる可能性はある。だが、インド風をスパイスで強化した〈ブラック〉こそが、ラホールのスペシャリテであるように思え、書き手は、ビーフカレーをブラックカレーで注文する事にした。


 やがて提供された品は、皿の半分以上を、大きな楕円形のライスが占め、そこに、本当に黒いというか、昏いカレー・ルーが波々とかかっており、具のビーフは、サイコロのような大きな物がゴロゴロっと入っていた。


 書き手は、カレーの具材として牛肉を好んでいるのだが、インド人が運営しているインドカレー料理店だと、そこはやはり宗教上の問題で、牛が提供されないケースがほとんどだ。

 これが、この店でトッピングをビーフにした理由にも繋がるのだが、インド〈風〉のカレーにビーフを付けられるのは、ラホールのような日本のカレー・ショップならではの強みであるように、書き手には思われるのであった。


〈訪問データ〉

 ラホール 外神田店:末広町・秋葉原

 B13

 十月二十六日・水曜日・十九時半

 ブラックビーフカレー:一〇五〇円(現金)


〈参考資料〉

 「ラホール外神田店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十四ページ。

〈WEB〉

 「カレーショップ ラホール」、『野川グループ』、二〇二三年一月七日閲覧。

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