第146話 受付嬢との朝 「恥ずかしいです……」
ちゅんちゅんちゅん。
窓の外を、ドラゴンぐらいあるスズメが飛んでいった。
「ふわ~ぁ……、朝か……」
柔らかな地面の上で寝ていた俺は、起きあがると、大きく伸びをした。
「う……ん……」
色っぽい声とともに、冒険者ギルドの美人受付嬢――エレナが、寝返りを打つ。
大地震で揺れ動く地面から、俺はひょいっと飛び降りて、何十メートル四方もある広大なシーツの海に着地した。
「あっ……。……! あっ……! オリオンさん!? オリオンさぁん!? ――やだ潰しちゃった!?」
目を覚ましたエレナが、俺の姿がないことでパニックになっている。
「おーい、ここだここー」
俺は声を投げて手で振った。
起きあがって取り乱していたエレナが、ぺたんとアヒル座りになって、安心した顔になっている。
下敷きになっても、潰されることは……ないと思う。ないんじゃないかな?
ステータスにブーストを色々かけて、STRばかり重点的に最大強化すれば、ベンチプレスで彼女の体重くらいは上げられる……はず。
何万トンあるのかはしらんけど。モビルスーツだの巨大ロボットだのの重量だよな。ほんと。
「ずいぶんムードのない朝になっちまったな」
朝は相手の体温を感じながら、自然に起きるまでまどろんで、目が覚めたときには、視線が絡みあうというのが理想なのだが。
「えっ……。あの……。はい」
エレナはベッドの上で正座をする。
「どうした?」
俺は問いかけた。昨日、熱い一夜を過ごしたというのに、ずいぶんと他人行儀だったからだ。
「いえなんと申しましょうか……。思い返したら、恥ずかしくなってまいりまして……」
彼女は昨夜のまま。全裸のまま。
見事なバストを、ぷるぷると震わせている。
あー、まー、昨夜は乱れたからなー。
俺はギルドの受付嬢の肉食っぷりには慣れているから、はじめから覚悟完了で、
彼女たちは、いつもニコニコ、笑顔の仮面を被っているせいか、仮面を外したときのギャップがすごい。
本性を見せても、俺が引いたりしないという信頼感なのだと受け取っておく。
「き、昨日のことは……。わ、忘れてください……」
「だいじょうぶだ」
俺は言った。
「どんな猛獣だって、俺にとっては可愛い子猫だぞ」
「も、猛獣……」
うん。肉食の猛獣だったなー。
「さて。もういちど仕切り直そうか」
「え?」
俺は彼女の手に載せられて、顔の前に運ばれていった。
「ムードが壊れちまったろ? だから仕切り直しだ」
俺のほうから、キスをした。
サイズが全然違っているが、そこはまあ、どうでもいい。
優しく雰囲気のあるキスを、短くやった。
ぽっと少女のように顔を赤らめたエレナに、俺は囁いた。
「もう一回、可愛い顔を見せてくれよ。もう一ラウンドしようぜ」
「え。でも出勤しないと……、あっ……、だめです、だめ……、だめ……」
だめよだめよは、OKのうち。
俺は彼女の巨大なおっぱいにダイブした。
◇
「もお……、オリオンさんのせいで、大遅刻になっちゃったじゃないですか……」
ギルドに急ぐエレナの肩に座っている。すぐそこに見える耳に向けて、俺は話しかける。
「俺だけのせいじゃないな。一回で済ませておけば遅刻にならなかったんじゃないか」
「そ、それは……」
エレナは言い淀む。
うん。俺も性獣なめてた。
溜め込まれていたギルド嬢のストレスと性欲とを、舐めてた。
もっともっとと、際限なくおかわりを要求してくる彼女のために、ドラゴンの群を壊滅させるぐらいのドリル系の大技を連発するハメになった。
ところで、気がついたのだが……。
レベルが、いくつか上がってた。
巨人の国に来て、なにも倒していないので、経験値が入るはずもない。だからステータス画面を確認していなかったのだが……。
いつのまにやら、膨大な経験値が入っていた。
巨人たちは、皆、物凄く高いレベルを持っている。
下っ端兵士たちでさえ、Lv300だの400だのといった有様だ。
はじめは、とどめを刺せば膨大な経験値を得られると思ったが、兜の中身が美女だとわかって、殺すのをやめた。
かわりに別な目に遇わせて、「しぬしぬ」と連呼させてやったがなー! はっはっはー!
……ひょっとして、それか?
死なさなくても、逝かせれば、経験値が入るのか?
それは巨人の女だけか? それとも人間の女でも入っていたのか? 巨人の経験値が膨大なので、Lvが上がるほど入ってきて、それで今回気づいたのか?
ふむ……。
あとでじっくり検証してみないとな。
ちなみに、ギルドの受付嬢のエレナも、Lv300超えである。
ギルドの受付嬢は、一般人よりも高いレベルであることが多いが……。下界なら、魔大陸のモンスターでさえ、こんな高レベルはお目にかかれない。
「もうっ、オリオンさんも一緒に謝ってくださいね……」
冒険者ギルドに入る前、エレナは俺に言ってきた。
「ところで同伴出勤になるが、かまわないのか?」
「わっ――きゃあぁ!」
もう遅い。
ギルドの中に入ってしまっている。
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