この異世界に救済を
秋月良羽
プロローグ ある語り手の最後と始まり
第1話
俺は目を覚ます。
ここは、どこだ。
辺りを見回すと、そこには、資料と思われるものがたくさんある…部屋だった。
何で俺はこのような場所に―…。
俺は起き上がると同時に、立ち上がる。
そう、俺は眠っていたと思われる場所に、視線を移すと、それはソファーベットが一つあった。
色は茶色で、どこか大きな会社? 役所? そんなイメージを俺に抱かせる。
「フフ、お目覚めですか。」
と、女性の声が聞こえるの聞こえた方、ソファーベットのある場所から俺の立っている位置とは反対の方向に視線を向ける。
そこには―…。
一人の女性、いや、美少女と言っても可笑しくないぐらいの女がいた。
その女は、緑色の紙をしており、綺麗な白、内側に向かい茶色と黒の目をしていた。オッドアイではない。その目は中央から順に黒、茶色、白という感じで―…。
俺は目の仕組みをこの場で度忘れしてしまったために思い出せない。
そして、小さいと感じさせられる口から再度、言葉が発せられる。
…………。
という感じかな。
彼の視点に立ってみると。
あ~、何か急に視点が変わったと思っている人も多いかもしれないねぇ~。
だって、これから始まる物語はすべて、私が見てきたものを皆様に語るのだから―…。
私がなぜ語れるって?
そんな理由、今はどうでもいいじゃないですか。
だって、それは、ほんの少し時間をかけて、私の語りを聞けばわかることだし―…。私の名前もその時よりも少し前か、どうかは秘密だけど、わかりますよ。
さてさて、私のためにこんな時間を使っている間に、進めていきたいのだよ。
お前が勝手にそんなことをしているのだろう?
そうですね。やっぱり、主人公視点の語りがあるのとないのとでは、皆さんのね。主人公への気持ちの入り方がね、…違いますから―…。
なら、お前は出てくるな、とか思っている方もいると思いますが、ここから私が頑張っていきますので、どうか、どうか。
ということで、真面目に語っていきますか。
「ここは―…、お前は―…。」
私が語っている話の主人公である
というか、少女というけど、ちゃんと大人の女性に近いと言った方がいいのかな。
そう、少し幼いような感じに見えますねぇ~。
そして、青色の制服に身を包んでおり、この世界管理局における女性職員の服装だということが一目でわかってしまいます。
デニムスカートという感じで、良いですねぇ~。私はあくまでも、その人の素晴らしさが生かせているのなら、細かいことは気にしないけどね。
…っと。進めないと―…。
有輝に尋ねられた世界管理局の少女は、少しだけ笑みを浮かべて、語り始める。
「私―…、私は、イルアーナ=レイスリ。世界管理局の職員です。って、言われてもわからないのは当たり前のことです。
この世界はいくつかの選択、いや、始まりすら私たちにも分からない世界は、世界の数、世界全体の大きさ、時間という三次元を根本として構成させているのです。
難しいですよね。私たち、世界管理局の職員でも理解できている者は少ないし、専門的な知識を要することです。
達観有輝、あなたはこう理解しておけば良いのです。
この大量に存在する世界の管理をおこなっているのが世界管理局であり、私はその職員であることを―…、です。
そして、達観有輝……、あなたは、君の感覚では今朝のことであるでしょう。朝、学校へ行くためにいつもの駅で、電車を待つ中、何者かに後ろから押され、線路へと落下していき、特急電車に轢かれそうになったということは、記憶の中にございましょう。
そして、我々、世界管理局は、達観有輝、あなたには死んでもらっては困るので、この我々が面談や資料を保存する場所に使っている部屋へと転送した次第でございます。特急電車が来る前に―…。
だけど、大丈夫ですよ。我々は、達観有輝が線路の落下させられている最中の記憶は駅のホームおよび駅員の記憶の中から、ちゃんと消去しておきました。
で、ここから、本当の話といきたいと思います。」
イルアーナさん、いきなりそんな大量の情報を言ったとしても、有輝の頭はショートするしかないのだよ。
だってさ、世界管理局とは何か、達観有輝はどうしてこの世界管理局にいるのか、この二つだけでも有輝にとっては大きくて、重要な情報なのだよ。
ゆっくり、理解させるように、確認しながら言わないと―…。
ここで、達観有輝がどういった経緯で、この世界管理局にいるのかを少しだけ理解できたのではないだろうか。
(……一度にそんな大量に言われても―…。)
「頭の中を整理したい。」
そりゃそうだよね。ということで、有輝、ちゃんと整理していこうか。
有輝の整理ターイム。
「まず、俺は、今朝、駅のホームで誰かに押されて、線路に落下しているところを助けてくれたということだな。」
「ええ。」
「そして、俺に死なれてると困るのが、世界管理局、お前たちの組織か。」
「お前たちという言い方は気に食わないですが、だいたい合っています。
要点を理解しているので、話を先に進めさせてもよろしいでしょうか。私も抱えている仕事が大量にありますし、定時には帰りたいのですが―…。」
お前という言葉を使うと、相手の方が不愉快な気持ちになるのは仕方ないですよねぇ~。
だけどね、お前という言葉は、元々は「御前」と書いており、目上の人に向かって使う敬称だったのだ。その後、近世末期から同輩や目下の人を見下して呼ぶ語になったそうだ。
ただの知識の受け売りみたいなものですけどね。達観有輝がいる世界の属していた国では―…。
有輝の方も、今の自分がどうして、このような場所にいるかということを完全には把握できていないし、急に起こったことなので、混乱しているのでしょう。
というか、イルアーナさん。自分の仕事を早く終わらせて定時に帰りたいのはわかりますが、有輝にそれを言うのはいけないと思いますよ。
言うのなら、君のところの上司に直接言ってくださ~い。
「わかった、で、俺に死なれたら困るのはどういった理由だ。」
(そう、この俺に死なれる困る理由があるのだろう。こんな訳の分からないことに巻き込まれているんだ。理由ぐらいはしっかりと聞かないと―…。
それに、危険な組織や団体なら、逃げ出すのが正解だ。そのために、情報を集めないと―…。)
有輝は冷静になりましたねぇ~。
そうだよ、有輝の生まれた世界の日本では、子どもの頃から変な人にはついて行かないとか、変なことを言う人とは関わってはいけないとか―…。
世界管理局なんて、有輝が生まれた世界にも、私が生まれて、生きた世界にも存在しませんというか、それらの世界を管理している組織だから、我々が知らなくても当然なんです。
そして、実際には変な組織ではなくて、ファンタジーとか異世界転生および転移とか関係のイベントなんです。有輝は気づくかな。言ってもらわないと無理かぁ~。
「ええ、我々、世界管理局は、このいくつもの世界の管理をおこなっている組織であり、達観有輝が知らなくても当然の組織です。
あなたは、ビッグバンという約138億年前に起こったとされる爆発によって、誕生した世界、アルケニアルの中の地球、日本という国に属している感じです。
意味を説明しろと言ったとしてもわからないと思いますから、そうなんだという感じで受け入れてください。
そして、ここから本題です。達観有輝が死なれては困る理由は、君が異世界の一つ、フォングラを崩壊から救うことのできるキーマンであるからです。」
(フォングラ…。俺が死なれると困るのは、フォングラの崩壊から救うため?
何言ってるんだ? 意味不明なんだが―…。)
まあ、意味不明に感じるのは当たり前だよねぇ~。
だけど、これは事実のなのだよ。
達観有輝、君は、私の生まれ、生きた世界であるフォングラを救うことのできる大切なキーパーソンだ。
本当に、本当だからね。
嘘じゃないからね。
ここは受け入れていいんだよ。君の世界にもあるありふれた物語の中に描かれていることじゃないか。
「なので、達観有輝。あなたを早期にでもフォングラに派遣することにします。
だけど、一人では大変なことは確かでしょう。」
と、イルアーナは言うと、近く置いてあった一冊の本を有輝の元へと向かい、手渡すのだった。
「この中から選んでください。」
有輝は、一冊の本を見る。
ペラ、ペラ、と音をさせながら―…。
このペラペラ音、私、好きなんですよねぇ~。
こう、一ページを読み終えた感というものがあって、頑張って読んだぞーという気持ちが溢れて―…。
はあ~、たまりません。
もっと、聞かせて欲しいよ、達観有輝、ページをめくるのだ。さあ、さあ、さあ!!
おっと、すみません。
つい、好きな音を聞けてしまったので、どうしようもないくらい興奮してしまいました。
私が限界化に近い状態にあった時に、有輝はページをめくっていきながら、疑問に感じるのだった。
「選べって、フォングラとかいう世界へ行くお供でも選べということの意味なのか。」
「そうです。」
「というか、これ全部、人の姿をしているのもいるけど、使い魔と書かれているのだが―…。」
そう、有輝が読んでいる本には、使い魔が大量に載っており、ここから、フォングラの案内や協力するためのパートナーである使い魔を選ばせようとしているのだ。
本当に、イルアーナさんは嫌だったんですねぇ~。
何が、とか思う人は私の語りを聞いていれば、わかるのです。
だから、私の語りを聞きましょ。
「そうです。達観有輝には使い魔とともにフォングラに行っていただきます。
どの使い魔も素晴らしい能力を持っており、必ずや達観有輝のフォングラでの行動をしっかりと助けてくれます。
というか、さっさと選んでください。
私は、達観有輝をフォングラに送った後も、大量に仕事があり、定時までに終えて、さっさと帰りたいのです。
理解できますか。理解できなくても、しろってもんです。」
(ムカつく言い方をしてくるなぁ~。それに、前にも聞いたぞ。というか、世界管理局には定時という観念が存在するのかよ。どうでもいいが―…。
使い魔と言っても、どれも、本当に存在するのか。
明らかに可笑しい組織に捕らえられしまっているし、逃げ出そうにもせかされるし―…。
ここは、適当に、相手にとって馬鹿げたことを言った方がいいのかもしれないなぁ~。
例えば―…。)
「決まりました。」
有輝がおもしろいことを言うようですねぇ~。さて、さて―…。
「使い魔が決まりましたか。フォングラに優秀な使い魔とともに行くのは、とてもいいことです。
では―…。」
「使い魔はいらない。俺を助けてくれたのはありがたいが、このような傲慢な態度をとられるのは不愉快だ。
だから、目の前にいる世界管理局職員のお前をフォングラに一緒に連れて行く。責任とれよ。
俺をここに捕らえ、何かをさせようとしているのだからな。」
うん、さすがに責任はとった方が良いと思いますが、使い魔で誤魔化すのは―…。
世界管理局の使い魔って、優秀なのもいるし、イルアーナさんよりも確実に役に立つことは間違いないんだけど―…、イルアーナさんの態度が悪すぎるんだよなぁ~。
だから、有輝はそのような馬鹿げたことを言っているし、世界管理局が怪しい組織なのだと思っているのですよ。怪しさは私が感じている面でも変わりはありませんが、職務自体が真面なのは事実ですし―…。
(これで、俺が頭おかしい人物だと思われて―…。だが、油断は禁物だ。
何をしてくるかわからない以上、警戒を解除するべきではない。)
有輝は、警戒しているのねぇ~。解く気はない。
私としては、イルアーナさんが有輝にそのような態度をしていることを止めて、懇切丁寧に接して欲しいし、有輝は世界管理局という存在と世界の事実の一部を受け入れてくれるとなぁ~。
まあ、無理かも。ここでは―…。
「へぇ~、私かぁ~。私がフォングラに達観有輝のお供として行って、その世界を案内して、一緒にフォングラを救うのですか。
……………。
そんな、まだ、モンスターとか権謀術数を繰り広げる人間どものいる世界に行くなんて、
私は、定時までに面倒くさい仕事を終えて、家に帰り、プライベートな時間を過ごし、だらだらと堕落した生活を送るの!!
年中仕事をしなければならない世界なんて!!! 嫌!!!」
(我が儘かよ。まあ、働きたくないという気持ち自体を否定することはできないけど、生きるためには何がしかの生活に必要なものを得るための労働をしないと飢えてしまうからな。
貨幣経済の世界だろうと、そうでない世界であろうとも―…。)
そうなんだよねぇ~。
人の世界って、農業化以前だろうが以後だろうが、文明化以前だろうが以後だろうが、食料を得るための行動をしないといけないのだ。
農業化以前なら、狩猟がほとんどの面で主となるし、農業化すると、狩猟だけでなく耕作や牧畜が必要になるし、文明化というか第2次、第3次産業に従事する人の人数が多くなると、何かを作ったり、サービスを提供したりして、もしくは雇われて働いた結果で得た金銭で、食料などの生きていくために必要なものを買わないといけない。
人は食糧を得るための行動からは逃げられないのだろう。諦めるしかないぐらいに―…。
結局は、イルアーナさんの目的は達成できないというわけだ。諦めるしかない。
イルアーナさん…、生き方、変えよう。
「じゃあ、俺はフォングラにも行かないし、帰らせてもらうからな。このようなインチキ臭い危険な場所からは―…。」
有輝が外に出ようとすると、イルアーナと有輝のいる部屋に一人の前髪の薄そうな男性が部屋の中に入ってくるのだった。
あっ、私もこの人に世界管理局に来た時に、会ったことがあるよ。
私の上司で、部長さんです。
ということは、イルアーナさんとは同僚であり、先輩後輩という関係になるですかぁ~。
「やあ、君が達観有輝君だね。」
と、私の上司の部長さんが優しそうな言葉で言うのだった。
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