白き罪人と魔装剣
WATA=あめ
序章:追憶
自分という存在を初めて自覚する、
その時の光景を覚えているだろうか。
......忘れるわけがない。
その時の記憶が今もなお、自分を飲み込もうとしてくるのだから。
————4年前
ここは海に囲まれた完全なる孤島。
外界との交流は完全に遮断されており、
こんな場所にわざわざ訪れる外界の者はごくわずかだ。だからこそ、島民たちは力を合わせて
生きていかなければならない。
そんな孤島のちょうど真ん中の拓けた場所に、1人の少年が佇んでいた。
まだ幼い少年だ。優しげな顔立ちに、丸々とした真紅の瞳。年相応の、細身で小柄な体躯。
そして何よりも特徴的なのは、神秘的で綺麗な白い髪。
———しかし、少年を囲む光景はそれとは対照的だ。一言で言うならば、
「......ぁ、......」
周辺に建っていたのであろう、破壊された建造物の残骸と共に広がる、辺り一面の赤。赤、赤、赤、赤、赤———それらが全て血であることを認織するのに、そう時間はかからない。
「.......ぅ、ぁ.......」
次に目に入るのは、辺り一面に広がる血の上に転がる、死体の山。ほんのひととき前までは、普通に生きていて、そして笑い合っていた。そんな人々が、今は物言わぬ
「ぁ......」
ポロリ、と。
少年の頬を一筋の涙が流れる。しかし、少年にはなぜ自分が涙を流しているのか理解ができなかった。思い出そうとしても思い出せない。まるで自分自身が思い出すことを拒絶しているような、そんな感覚だ。
涙を拭おうと顔に触れた少年の小さな右手には、赤黒い血がベッタリとついていた。
「!」
改めて自分の体を見回す少年。その全身は、血で真っ赤に染まっていた。彼の綺麗な白い髪にも、びっしりと血がこびりついている。
そんな彼の左手には一本の剣が握られていた。
奇妙な黒い剣だ。小柄な少年には少し大きすぎる大剣である。その大剣にも血がこびりついている。
「これ、は......」
この手に馴染む感覚。そして、生まれた時からともに生きてきたような不思議な感覚。間違いなく自分の剣だ。少年はそう結論づける。
そんな自分の剣が、血まみれになっている。
そんな事実に、少年は嫌な寒気を覚える。
そして、少年の予感は当たることとなる。
黒い剣は、地面に突き刺さっていた。しかし、ただ突き刺さってた、というわけではない。その剣は、何かを貫いていたのだ。少年はその何かの正体を探る。
「う、そ......」
思わず少年は後ずさる。明らかに、それは死体だった。よほど激しい戦闘があったのか、ひどく損傷している。だがそんな状態でも、少年には誰だかハッキリと分かった。
「あぁ......、ぁ、ぁ、ぁ......」
走馬灯のように流れる温かい日々。少年を包み込む島民たちの笑顔。そして、そんな日々を支えてくれた、少年のたった1人の家族———
「あああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
少年は全てを思い出す。
島民たちを、あの人を、この手で皆殺しにしてしまったことを。
———少年は自覚する。自分が怪物であることを。そして、自分が誰かの隣にいてはならない存在なのだということを。
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