第81話あけぬとて

寛平の御時 きさいの宮の歌合の歌

藤原敏行朝臣


あけぬとて かへる道には こきたれて 雨も涙も ふりそぼちつつ

                      (恋歌三639)


夜が明けてしまったので、(女性の家から)自分の家に戻る道で、雨も涙も、はげしくしたたって、私の衣をずぶ濡れにして、降り続けているのです。


大雨になる兆しでもあったのかもしれない。

しかし、夜が明ければ、女の家にとどまることはできず、自分の家に戻るのが、当時の男女の習い。

どうにもならない当時の慣習と、大雨を恨み、ただ涙して、雨に濡れるのみ。

そこに風情を感じるか、哀れを感じるか、それは、人それぞれ。

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