第75話いのちやは なにそはつゆの あだものを

題知らず

紀友則


いのちやは なにそはつゆの あだものを あふにしかへば をしからなくに

                           (恋歌二615)


命といっても、露のようにはかないものと思っています。

もし、あの人に逢えることに換えられるならば、何も惜しくはありません。


かなり感情が昂ぶった歌と思う。

愛しい人に会えるなら、自分の命が惜しくないと、言うのだから。


よほど逢えない事情があるらしい。

逢えない厳しい現実があるからこそ、恋心は燃え上がる。

「命を捨てれば、逢えないではないか?」

そんな冷静な指摘など、耳には入らない。

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