第57話秋ぎりの はるる時なき 心には

題知らず

凡河内躬恒


秋霧の はるる時なき 心には たちゐのそらも おもほえなくに

                        (恋歌二580)

※秋霧のはるる時なき心には:秋の霧が絶えずたなびき、晴れる時がないように、私の心も(恋の嘆きで)晴れる時がない。

※たちゐのそら:立ち居振舞いの向き。「空」は、ここでは向き、方向の意味。


秋の霧のように(恋に悩み続け)晴れる時がない心では、日頃の何でもない動きでも、(うわのそらで)おぼつかないのです。


恋煩いで、何をしても、うわのそら、のような状態を読詠む。


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