第29話:晒し者

バレンシア王国暦243年10月17日:交易都市


「全て私がやりました。

 教皇と国王相談役の命令で、女子供をさらって、子供は神官の慰み者に、女は奴隷として異国に売りました。

 全て私がやりました。

 教皇と国王相談役の命令で、女子供をさらって、子供は……」


「この国の人間は全て奴隷にする。

 本国政府の命令で、この国の軍事力を調査していた。

 この国の騎士は腐り切っていて、我が国の敵ではない。

 宣戦布告の条件が整い次第、本国の精鋭騎士と植民地の奴隷兵がやってくる。

 奴隷兵の代わりなどいくらでもいる。

 この国の一部を占領したら、その地の人間も奴隷にして死ぬまで戦わせる。

 この国の人間は全て奴隷にする。

 本国政府の命令で……」


 俺が捕らえ、サクラが拷問を加えて自白させた商人と紅毛人船長。

 その二人が交易都市の広場で晒し者になっている。

 サクラが磔台を用意してくれた。


 サクラの激烈な拷問に耐えられなかった二人は、心が壊れている。

 サクラの命じられるまま、同じ言葉を繰り返している。


 商人の家族や使用人もサクラに捕らえられ拷問され、何でも自白する状態だ。

 紅毛人の船乗りも全く同じ状態で、出航などできない。


 サクラ、海に出られるのなら紅毛人の船を乗っ取ってくれ。

 分身体に紅毛人の姿を写させて、あの船を手に入れてくれ。

 あの船の構造を完璧に覚えて、同じ船を造れるようになってくれ。


 俺の想いを正確に汲み取ってくれるサクラは、ビッグスライム程度の分身体を百以上派遣してくれた。


 紅毛人が我が国に悪影響を与えないように、居住できる場所は隔離されている。

 船が停泊できる港と居住地は紅毛人専用地域。

 その外側にあるのが、代官が認めた商人だけが入れる交易地域。


 船長と船員の姿形を写し、許可証を奪った分身体は専用地域に入れる。

 くわしい船の操作法は分からないが、俺の知っている事はサクラに伝わっている。

 船長と船員を拷問した時に手に入れた知識もある。


 今直ぐ完璧に操船できなくてもいい。

 船を動かしている間に体で覚えてくれたらいい。

 座礁や沈没させる事があっても、同じ船を建造できれば何度でも挑戦できる。


「もうしゃべるな!

 これ以上嘘を話す事は許さん!」


 磔台で晒し者になりながら、教皇と国王相談役の悪行を話していた商人と船長。

 交易都市の代官は、これ以上彼らに真実を話されては困るようだった。

 教皇から命じられたのか国王から命じられたのかは分からないが、慌てていた。


 だが、そう簡単に口を封じられては困る。

 こいつらには教皇と国王の悪行を国中に広めてもらわなければならない。

 だから代官所の騎士団はサクラの分身体が叩きのめした。


 この国の騎士団は基本腐り切っている。

 家柄の良い騎士家の長男が騎士団員に選ばれる。

 そんなお坊ちゃんは甘やかされ全く使い物にならない。


 極まれに武術鍛錬を欠かさない騎士もいるが、それでもビッグスライムに勝てるほど鍛えられた者は滅多にいない。

 ヒュージスライムに勝てる騎士は皆無と言ってもいい。


 代官所の騎士や、商人の口を封じたい者達が放った刺客を全員捕らえた。

 捕虜、証人の数が多くなれば多くなるほど悪事を隠蔽できなくなる。


 教皇や国王が考えているような、ほとぼりが冷めるまでは大人しくしておいて、時期が来たら悪事を再開するような事は絶対にやらせない。


 特に孤児を下劣な欲望のはけ口にするようなマネはさせない。

 女性を性奴隷として異国に売り払う事もさせない。


 これまでそのような悪事に加担していた者達は絶対に許さない。

 大きな戦争や内乱につなげる訳にはいかないから、手段を選ばずに大掛かりにする事はできないが、絶対に罰を与えてみせる。


 俺の信条は前世から変わっていない。

『目には目を歯には歯を』だ!


 人を奴隷にした者は同じように奴隷にしてやる。

 人を獣欲を満たすために犯し殺した者は、同じように犯し殺してやる。

 俺が直接手を下す気ないが、似たような下劣な人間はいるのだ。

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