転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全

第1話:難癖

バレンシア王国暦243年4月13日:冒険者ギルド・ロアノーク支部


「おい、てめぇ、新人か?!

 ギャァハハハハ、スライムなんざ連れやがって、それでテイマーの心算か?!

 まだおむつも取れねぇガキの分際で冒険者になろうなんて百年はえぇ!

 親切な俺様がここの流儀を教えてやる。

 絶対に忘れられないように身体に叩き込んでやる。 

 まずはその役立たずのスライムを家の従魔の餌にしてやるよ」


「クーパーさん!

 新人さんを、それもそんな小さい子供を食い物にしないでください!

 これ以上非道な事をするようなら、ローソンズクランのメンバーでも絶対に許しませんよ!」


「受付嬢さん、俺なら大丈夫ですよ。

 それよりも、ここの掟を教えてください。

 従魔を奪おうとする事は罪ではないのです」


「罪です、明確な犯罪です」


「じゃかましいわ!

 恐喝している訳じゃねぇ、金のねえガキに常識を教えてやる代金だ!」


「こういう無法が通用すると言う事は、この低能のゴミクズが所属しているというローソンズクランと言うのは、ここで一番力があるのですか?」


「そんな事はありません、絶対にそんな事はありません。

 ここにはダニエルズクランと言う真っ当なクランがあります!」


「はん、大陸からの助っ人が居なけりゃ何もできない弱小クランだろうが!

 あの黒人女が大陸に戻ったら直ぐに潰してやるよ!」


「俺がこのゴミクズを叩きのめしたら罪になるのですか?

 もしそうなら、こんなギルドに所属しても意味がないのではありませんか?

 他の支部に行った方が良いのではありませんか?」


「……それは……」


「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ!

 他に支部に行かしてもらえるとでも思っているのか!

 さっさとスライムを寄こしやがれ!」


 俺に難癖をつけていた奴の取り巻きが殴りかかってきやがった。


「ギャクッ」


 小汚いクソハエに殴られる俺ではない。

 とはいえ、汚物に手を触れるのも嫌だ。

 仕方ないので靴底が当たるような蹴りで下顎を粉々にしてやった。


「てめぇえ、何しやがる!」


「ゴミクズが腐った手で触ろうとしたからぶちのめしただけだ。

 ただし、手で触ると汚いので、靴でだけどな。

 受付のお姉さん」


 この冒険者ギルド支部で活動するかどうかは別にして、どうせ汚物を片付けるのなら正当な報酬は貰っておこう。


「はい!」


「ギルドのレベルはどうやって決まるのですか?」


「F級までは各支部の試験官が実力を確かめて、支部マスターが与えられます」


「なに悠長に話ししてやがる、グアッ」


 また取り巻きの1人が殴りかかってきたので、同じように顎を砕く。


「D級までは試験を合格して3人以上の支部のマスターの承認で与えられます」


「てめぇ、もう許さねぇ、ギャッフッ!」


 3人目の取り巻きの下顎も蹴り砕く。


「C級はギルド連合の理事長から承認されなければ与えられません」


「てめえ、ただもんじゃねぇな、なにもんだ?!」


 クーパーと呼ばれていた、最初に難癖をつけてきた奴が問いかけてきた。


「お前達のような、鼻が曲がりそうになるくらい臭い、ゴミクズが嫌いなガキだよ」


「なんだと、もう許さねぇ、てめっら一斉にかかれ!

 死にやがれ、クソガキ!」


「ギャッ、グッ、ゴッ、ガッ、グギャ、ガッフッ」


 クーパーと呼ばれていた奴と残りの取り巻きだけでなく、ギルド一階に併設されている食堂兼酒場からも応援が来たが、一緒に顎を蹴り砕いてやった。

 合計13人ぶちのめした事になる。


「ぼく、いえ、貴男何者なの?

 最低のゴミクズのような連中とはいえ、こいつらも熟練の冒険者よ。

 クーパーに至ってはパーティーリーダーでE級なのよ。

 それを、一瞬で13人も叩きのめすなんて……」


「個人でE級の冒険者を、他の連中込みで叩きのめしたのなら、D級にしてもらえるのですか?

 そうでなければ、揉め事は嫌なので、少し離れた場所に有る冒険者ギルドに行って入会申し込みをしますが?」


「申し訳ないな、残念だが私個人で与えられるのはF級までだ」


「マスター?!

 何時から見ておられたのですか?」


「途中からだよ、オリビア。

 随分と楽しい状況になっていたから見させてもらっていたんだよ」


「見ておられたのなら止めてください!」


「まあ、まあ、まあ、まあ。

 オリビアにはまだ見抜けないのか、それとも趣味で目が曇ったのか、クーパーごときにやられる子じゃないよ。

 だが先にこの事は話させてくれ。

 少年、君が恐喝犯を取り押さえてくれた事は、私とオリビアが見届けた。

 他の受付嬢や冒険者の中にも証言してくれる者がいるかもしれない。

 それを懇意の支部マスターに話してD級を承認してもらう。

 だからそれまでF級で我慢してもらえないだろうか?」


「時間がかかるようなら他の支部に移りますよ?」


「ああ、出て行かれないように急いで承認してもらう」


「ではもう一つ、野獣を狩ったら素材は冒険者の物ですよね。

 だったら恐喝犯を捕らえたら身包み剥いでもいいのですか?」


「クックックックッ、構わない、どうせ犯罪者奴隷にする連中だ。

 武器も防具も金も、全部少年のモノだ」


「少年は止めてください。

 僕にはリアムと言う名前があるのです」


「そうか、ではリアム。

 冒険者登録をしてもらおうか」


★★★★★★以下は解説なので嫌いな方は読まなくても大丈夫です。


『冒険者レベル』


S級:下位属性竜を1人で斃せる

  :ワイバーン・クラーケン・リントヴルム・ワーム。

  :オーガやジャイアントの集団を1人で殲滅できる。

  :現在大陸にS級と認められた冒険者はいない。


A級:ドラゴン以外の魔境ボス(亜竜種も含む)を1人で斃せる

  :ビッグオーガやビッグジャイアント。

  :ヌエ、スフィンクス、グリフォンなどのボス。

  :現在王国内にA級と認められた冒険者はいない

  :大陸中でも5人しかA級冒険者は存在しない。

  :王や貴族が騎士団長に求めるレベルだが、現在は存在しない。


B級:ヌエ、スフィンクス、グリフォンを1対1で斃せる

  :100頭程度の魔狼の集団を1人で斃せる

  :ビッグゴブリンに率いられた統率の取れた群れを1人で殲滅できる。

  :現在王国には8人のB級冒険者が存在する。

  :王や貴族に仕えている騎士隊長レベル。


C級:オーガやジャイアントを1対1で斃せる

  :10頭程度の魔狼の集団を1人で斃せる

  :1流の冒険者と認められる

  :王や貴族に仕えている騎士長レベル


D級:ビッグゴブリンやホブオークと1対1で斃せる。

  :魔狗やゴブリンの小集団を1人で斃せる。

  :冒険者パーティーのリーダーを務められる。

  :王や貴族に仕えている騎士の最低レベル。


E級:一般種の魔狼や魔熊やオークを1人で斃せる程度

  :よやく冒険者組合で1人前と認められる。

  :王や貴族に仕えている従騎士のレベル


F級:魔狗やゴブリン程度の弱いモンスターを斃せる程度。

  :辺境の一般的な猟師レベル

  :王や貴族に雇われている一般的な兵士のレベル


G級:狐や狸、鹿や大鼠程度の弱い獣や魔蟲を狩れる程度。

  :通常の辺境住民は最低でもこの程度の知識経験実力がある。


H級:町や村の中で雑用を行うレベル。

  :危険のない都市や大きな町でぬくぬくと暮らす人。

  :戦う力も気概もないが、身分も技術もない人がやっている。


 注:上位属性竜以上のモンスターを斃した人間は存在しない


F級までは各支部の試験官が実力を確かめて、支部マスターが与える

D級までは試験を合格して3人以上の支部のマスターの承認で与えられる

C級は試験に合格してギルド連合の理事長承認が必要

B級は試験に合格してギルド連合の理事長と国の承認が必要

A級は試験に合格して二人以上のギルド連合の理事長と2国の承認が必要

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