第3話☆泣かせてしまった
——ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……
河合先生の長く続いた謝罪が、耳の奥で響き続けている感覚で目覚めた。
瞳が捉えているのは見慣れた天井だ。昨夜の後悔に襲われる。
彼女を泣かせるつもりは微塵もなかった。そもそも、彼女が涙を流す姿すら想像していなかった。
彼女は、凛としていて生徒のからかいに動じず、素っ気なく受け流しぴしゃっと黙らせるかっこいい大人の女性に見えていた。
それでいて、たまに茶目っ気を見せ生徒らを笑わせていた。
生徒の前では、弱音や泣き言を言わずに涙も見せなかった彼女がだ……私の前で涙を流し、泣き崩れた。
想像していなかった光景に、慰めることすら出来ずにただただ立ち尽くすしかなかった。
身体の身動きが取れなかった。
昨夜は、連絡先を交換することすら叶わず、彼女と別れた。
この先一生、彼女とは出逢えないだろうと不安が過ったが、引き止める一歩が踏み出せずに、おめおめと帰宅した。
彼女との距離を縮めるどころか離れて、遠のいてしまった。
「あぁー、謝りたいなぁ……せっかくお近づきになれるチャンスだったのに。なんでこうも上手くいかないんだろう……ほんと、はぁー」
私が口にした呟きは、どこにも誰にも届くことはなく、殺風景な寝室に漂っては空しく虚しく消えていった。
私は傷心しきった
あの頃と……高校時代に見ていた
私は過去の想い出に浸りながら、朝食を口に運んでいく。
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