30分間を噛み締めて

うさみち

30分間を噛み締めて


 週に一度の面会日。


 許されているのは、30分間のみ。


 こんな時ほど、30分間のありがたみがよくわかる。


「一緒に帰れるの?」

「公園寄って帰ろうよ」

「まだ入院するの?」


 5歳と3歳の我が子。

 伝わるようで、伝わらない、そんな年齢。


 いつも思う。

 言っている意味がちゃんと伝わらない、「今」が一番可愛いって。


 そんな貴重な時間を共に過ごせないことを悔やんでいたら、30分間だなんてあっという間だった。


「また来週来るからね」


「「おかあさん、だあいすき」」


 ぎゅうっと抱きつく子どもたち。


 最高の30分間は終わりを告げた。



 来週の今日に、想いを馳せて、


 胸に固く、刻む言葉。



 ーー少しでも、元気な姿を見せるんだ。


 

 家路へ向かう背中を目に焼き付けて、


 私は今日を、生きている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

30分間を噛み締めて うさみち @usami-chi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ