■menu08:「★星アタックNo.1」

マダム。

今宵のメニューでございます。


よろしければ、御賞味を。

お気に召さなければ、削除願います。


※※※※※※※※※※※※※※※


「☆星ブロックッ!」

義母の無上のブロックが炸裂した。


「うぐぇ・・・・」

えぐり込むような衝撃に、つむぎは呻き声と共に倒れた。


薄暗い台所に座り込む細い肩が震えている。

丸ごと残された料理の皿がテーブルに見える。


か細い呟きが、切なく響く。

渾身の「ズッキーニソテー」だったのに。


しかも、しかも。

マリネ液に入れて一晩漬けこんだのに。


やはり、トマトを添えたのが悪かったのか?


グレーの闇の中、スポットライトがつむぎを照らす。

どこからか、BGMも。(懐かしい曲だ)


「苦しくったってぇ・・・」

曲に合わせ歌いだす、つむぎ。


「悲しくったってぇ・・・」

だんだん、乗ってきたぞぉ。


「でも、涙がでちゃう・・・」

もう、ズッキーニのことは忘れている。


「だって・・・」

誰に向かってポーズをとっている?


「女の子(?)だもん・・・」

誰が(?)をつけたかは不明だが、とりあえず可愛かったぞ。


「フッ・・・」

つむぎの口元が微かに綻んだ。


「よしっ・・・!」

気持ちが吹っ切れたのか、元気よく立ち上がるとテーブルの上を片付けるのだった。


台所の照明を消すと、つむぎは寝室へと消えていった。


だが、見逃してはいけない。

一瞬、振り返ったその顔の口元が、大きく歪んだのを。


「くっくっくっく・・・」

耳まで裂けた口から赤い舌がニョロニョロと・・・。


だが、すぐに元の主婦の顔に戻っていった。

そして、ポツリと呟いたのだ。


「甘酢が・・・明日には・・・・」



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