第二章【学院魔術対抗戦】

Prologue-2 カレンとの婚約決定後~

☽月〇日


決闘を終えたらカレンの婚約者になりました。


ちょっと待ってくれ。


おかしいだろ。学院長に抗議に行けばサムズアップしてくるし……カレンのクソ親父もなんであっさりと認めてるんだよ。


悔しそうな顔してるなら粘れ。


カレンとはあの日からまだ会えていない。


なんでも準備が必要なのだとか。結婚式じゃないのはわかったので、一安心したが……。


今から考えても仕方ないか……。


とりあえず今は婚約が決まってから不機嫌なマシロのご機嫌を取るとしよう。




☽月#日


こう……浅はかなのは俺だったのでないだろうか。


外見だけで人を判断し、評価を下す。


なんともひどい行いをしてしまったと反省している。


カレンが男装を辞めて、女子の制服を着て登校してきた。


大きく変わったところが一つ。


胸がすごく厚くなっていた。


もう歪むくらい膨らんでいた。


そして、俺はカレンとの婚約を受け入れた。


だって仕方ないじゃないか。


こんなにおっぱいが大きくて、可愛くて、俺のことを好きでいてくれる女の子を拒否する方がおかしい。


これ以上の条件なんて学院中を探しても見つからないだろう。


よって、俺はカレンの婚約者として励んでいこうと思います。




☽月▽日


生徒会役員に任命された。


おいおいおいおい。改めて認識すると意味がわからない。


カレンの婚約者になったことで立場を少しでも良くなるよう学院長からの配慮の結果とのこと。


報連相はどうした。権力を活用して、覆せない状態にしてから発表するな。


あのクソババァ、マジでいつかぶっ飛ばす。


問題はそれだけではない。


まさかのマシロも生徒会役員入りである。


カレンと二人きりの時間が増えるのに反対していた彼女は自ら立候補したのだ。


嫌がる俺に対して毎日カレンとマシロの我が二大巨乳ヒロインたちが上目遣いでお願いしてくる。


くっ! 俺はおっぱいに負けたりしない。


しないんだからな……!




☽月☆日


生徒会役員になりました。


何も見たくない、聞きたくない、思い出したくない。


あの醜態を晒した自分を思い返すだけで心に傷を負うので記憶を封印する。


全て見透かしてましたよと言わんばかりのミルフォンティの笑顔がめちゃくちゃ腹が立った。


こうして生徒会入りを果たしてしまったわけだが、どうも俺に期待しているのは普段の業務ではないらしい。


学院長の本当の狙いは俺とマシロの学院魔術対抗戦への代表入りだった。




☽月⇒日


学院魔術対抗戦とは各地方に存在する九つの魔法学院が生徒の実力を競わせる、言い換えれば生徒の自慢大会か。


三人一組スリーマンセルをそれぞれ十チーム、計三十人の代表を選出。


様々な部門に分かれて争うわけだが・・・・・・どうも俺たちをミルフォンティのチームに組み込みたいらしい。


話を聞くに昨年の学院魔術対抗戦ではあの【雷撃のフローネ】の弟子であるミルフォンティを擁しながら準優勝に終わり、同じチームを組んだ先輩方はずいぶんとバッシングを食らったらしい。


貴族だけで構成されるだけに他の平民が混合した学院に負けるのが屈辱だったのだろう。


ミルフォンティ自身は結果を出したから批判の嵐だったそうだ。


それらを鑑みるに俺は生け贄といったところだろう。


万が一の敗北も許されない。ほかの奴らはプレッシャーから逃げたわけだ。


その点、俺は悪評蔓延る男なので批判の的にはちょうどいい。


生徒会入りは嫌だが、代表として出るのは好意的だったりする。


選手として他校の生徒に接触できれば、将来的な引き抜きのために有望な生徒とのつながりができるからだ。


世の中全員が全員、善人ではないし、中には雇用先が欲しい生徒たちだっている。


こんなにも貴族の子息令嬢が集まっているのは王立の我が校リッシュバーグだけだ。


そういう生徒たちにとって公爵家というバックがある俺は有力な雇用主候補になる。


もう学院内でハーレム候補を探すのは難しい。


ならば、外へ目を向けるとき!


いるかな~、おっぱいが大きくてかわいい子!




☽月☼日


代表入りしてからミルフォンティと過ごす時間が多くなった。


同じチームなので連携を考えれば当然なのだが・・・・・・どうも視線が怪しい。


探るような、体の内側まで覗かれているような、気持ちの悪い感覚。


やはりあいつも師匠の決定とはいえ思うところがあるのだろう。


俺が選ばれたことが不満なのだ。


なんだ、感情らしい感情も出さないと思っていたが、人間らしいかわいい面もあるじゃないか。


なので、学院長に文句があるなら俺から言っておくぞと伝えた。


そしたら、なぜか笑われた。


なんだ。ちゃんと笑えるんじゃないか。




☽月?日


長く共に時間を過ごすことで気づいたが、ミルフォンティはできる女だ。


気が利くし、マシロたちとの仲も良好だし、俺に対しても物怖じしない。


何より淹れる紅茶が美味い。


あまりに俺が褒めるものだからアリスが珍しくへこむくらいには美味い。


今世の俺は自分が欲しいと思ったものはすべて手にしてきた。


彼女から将来設計を聞いた記憶もなかったので、思い切って勧誘してみた。


ミルフォンティならカレンとの婚約は関係なく返事をしてくれると思ったからだ。


まぁ、フラれた訳だが。


しかし、「私にそんな資格はありませんよ」とはどういうことだろう。


・・・・・・他のメンツに比べておっぱいがないことを気にしているのだろうか。


とりあえず、諦めずに勧誘は継続する方針を固めた。




☆月♡日


学院魔術対抗戦の舞台は島国の独立国家・ラムダーブ王国で行われる。


聞けばミルフォンティの生まれ故郷なのだとか。


一度は魔族との戦争によりどん底まで落ちたが、今は観光名所として栄えている。


ある種、ここでの成績が将来に直結しない俺たちは旅行気分だ。


ミルフォンティも久々の故郷で回りたい箇所がたくさんあるのだろう。


あまり自分の意見を言わない彼女にしては珍しく単独行動が増えた気がする。


気にかけておくとしよう。


それはそれとして、マシロさん? 嫉妬して服を引っ張るのはやめてくれ。




☆月▲日


俺たちのチームは当然、ミルフォンティとマシロの能力が活かせる魔術大戦部門でエントリーされている。


抽選で4ブロックに組み分けされ、トーナメント方式で優勝校を決める。


ドレスで着飾ったカレンが大きく手を振ってくれていた。


そして、なぜかその隣でアリスが謎の応援団に指示を出して、仕切っていた。


やめろ。大声で叫ぶな。旗を振るな。


とんでもない目で周囲から見られているだろ。


……くそ! こうなったらやってやるよ!


大暴れしてやるぜ、ちくしょう!!




☆月A日


魔法、武術。どちらにおいても高水準でまとまっている俺たちが負けるはずもなく、順調に勝ち上がっている中、どうもきな臭い話が回ってきた。


各校の生徒が数名、行方不明になっているらしい。


そして、そんな話を聞けば黙っていられないのがうちの狂犬アリスである。


他の生徒はどうなってもいいが、マシロとカレンを狙われるわけにはいかない。


俺からも運営委員会に取り合った結果、【雷撃のフローネ】自ら事態の収拾に動いてくれるらしい。


大会自体を中止しにしたとしても、この国から出るには数日を要するのだとか。


ラムダーブ王国側が稼ぎ時と判断して難色を示しているのが原因だ。


ならば、こちらとしても個人で手を打つしかない。


学院が用意した宿舎から地元の高級宿に移動して、アリバンたちも警備に就かせたし、俺とアリスも最大の警戒をする。


これで多少は安心できるか。


同じチームのよしみでミルフォンティも誘ったが、彼女は生徒会長として宿舎に残った生徒と共に過ごすらしい。


彼女らしい選択だ。


だが、気づいているか、ミルフォンティ。


お前は笑みすら浮かべなくなっていることに。




☆月⁂日


ミルフォンティの様子のおかしさが気になって、宿舎に行って正解だった。


どうも本調子じゃなかったみたいで彼女は怪我を負っていた。


実際、対峙したがそれだけの手練れだった。


【魔術葬送】が対魔術師に特化していなければ俺もろともさらわれていたかもしれない。


フローネの援軍と長期戦を嫌って去ってくれて命拾いした形だ。


俺にとって大切なミルフォンティは守れたし、結果的に他の生徒たちも守れ、最善の形になったと言える。


……もし次、襲撃犯と相まみえるならば、もう一つ隠し手を解放しないといけないな。


それともう一つ、彼女にも告げておいた。


「一度欲しいと思った時点で、俺はお前を諦めるつもりはない」


なんにせよ明日は決勝だ。


全てに決着をつけようじゃないか。




~ 一ヶ月の期間が空いている ~




☼月&日


ようやく日常に落ち着きを取り戻してきたので、久しぶりに日記を書こうと思う。


とりあえず、自分に起こったことをまとめておこう。


レイナ・ミルフォンティに代わって、生徒会長になりました。


レイナが新しく俺の婚約者になりました。


そして、内乱を未然に防いだとして国王から称号が与えられることが決定した。


・・・・・・どうしてこうなった?







◇大変お待たせいたしました。第二章【学院魔術対抗戦】編開始です。

 本年度も応援よろしくお願いします。

※時系列的には、一章のPrologueの「大人になりたい」発言の前のエピソードです。◇

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