第29話 『一蓮托生~蓮華の下で結ばれて~』の裏話 その2 『墨田ホープ』の人々の話
今回は追加キャラクター、
大口徳之介と彼の店『墨田ホープ』はもともと、『
大口徳之介は商売人としてのカリスマやはったりを持ってるが、妻子をこよなく愛する一途さも持っている。シベリア抑留からの帰還兵という設定にしたのは、米国で捕虜になっていた
大口徳之介の妻、ハナエはかつて浅草のカフェーの看板娘で、常連客からストーカーになった
娘の
戦後すぐはベビーブームでもあり、かつらたちの周りにも子どもが溢れていただろうが、『一蓮托生』では語れなかった部分だったので、場を和ませるためにも出せて良かった。
大口徳之介とハナエの仲人でもあり、喫茶店の開店資金を融通した
萩谷も大口一家を親戚のようにかわいがっており、望は「おじいちゃん」と呼んでなついている。個人的にだが、萩谷の声優は安原義人をイメージしていた。
カフェー『墨田ホープ』は徳之介の出征をきっかけに閉店したが、戦後はハナエが焼け残った自宅を改装して酒場として営業していた。ここに身を寄せていたのがかつて店員だったシングルマザーの
論の父親は進駐軍の兵士「ロナルド・グランド」だが、米国に帰国したため連絡も取れない。せめて手がかりになればと父親の愛称「ロン」から育美が名付けたことは本編で語ったとおりだ。新聞を読むなど社会情勢にも敏感で、進駐軍相手に働いていたことから、英語もある程度できる。かつらは当初とっつきにくく感じるが、懐の深い女性である。
柏憲子の設定も二転三転した。朝鮮から引き揚げてきたという設定になったのは、かつて二次創作で朝鮮戦争をテーマにしたことから、当時の引き上げ状況を多少知っていたからだ。かつらにとっては一足先に大人になった友人である。過酷な経験をしており、かつらにも引け目を感じているが、戦災孤児のリュウに寄り添うシーンなどで、彼女なりに乗り越えてきたことを語りたかった。
大口徳之介に助けられ、後に家出してきた十七歳の葵が、酒場で働くのはまずいと考えていたが、『一蓮托生~蓮華の下で結ばれて~』執筆準備中に、昭和二十二年の『飲食営業緊急措置令』という法律で酒を出せなくなったキャバレーなどが、代わりにコーヒーを出していたということをネットで知り、喫茶店に商売替えするということで葵も働けるようにした。
かつて『桜散り、柳芽吹く』で康史郎があの世に旅立ったことで、『一蓮托生』の登場人物は(名前のみ出たあかり以外)全員鬼籍に入ったと語ったが、『一蓮托生~蓮華の下で結ばれて~』で追加された大口望、和世の姉妹と丹後論は健在という設定になっている。いずれ現在の彼らを語る機会もあるだろう。
次回は
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