第13話 『一蓮托生』の裏話 その1 横澤家の場所決め

 今回から数回に渡って、『一蓮托生(いちれんたくしょう)』本編作成時の裏話を語っていく。なお、内容のネタバレを含むことをご了承いただきたい。


 学生時代の創作『泥中の蓮(でいちゅうのはす)』は、2020年にカクヨムで公開した後、多数のカクヨム会員やネットの友人に読んでいただいた。特に、ネットでの長年の友人、Oさんには登場人物のイメージイラストを多数描いていただき、本当にありがたかった。

 と同時に、四人きょうだいの二人を失い、残されたかつらと康史郎こうしろうはその後どう生きたのか、書いてみたいという思いも浮かんでいた。その思いが形になるきっかけは、2021年夏、Oさんがツイッターで浴衣姿の横澤よこざわかつらのカラーイラストを描いてくださったことだった。

 浴衣と言えば花火、と考えた私は、戦後の花火大会はいつから再開されたのか、ネットで調べてみた。東京で本格的に花火大会が再開されたのは昭和23年(1948年)の隅田川花火大会だと分かり、姉弟が花火大会に行く話を書いてみようと思った。

 その後の二人を描くにあたり、書いてみたいと思っていたもう一つのエピソードが、昭和22年(1947年)のカスリーン台風でバラックが壊されて途方に暮れる二人というものだった。

 というわけで、物語のメイン時期は昭和22年、ラストが昭和23年の隅田川花火大会と決まった。しかし、『泥中の蓮』では横澤家の場所は東京としか決まっておらず、舞台となる地域を決めなくてはいけなかった。

 花火大会に行きやすいよう、隅田川の近くで東京大空襲に被災し、なおかつ一家が逃げ延びなくてはいけない。場所の選定の参考にしたのが


古地図で見る東京大空襲|戦争|NHKアーカイブス

https://www.nhk.or.jp/archives/sensou/special/tokyodaikushu/


だった。当時生き延びた被災者の証言も収録されており、上野の山や現在の松坂屋百貨店近くまで逃げたという証言を元に、被災地であり、大通り1本で上野に繋がっていて逃げやすいと思われるうまや橋近くを横澤家の場所に設定した。この設定を軸にして資料を集め、『一蓮托生』のエピソードを決めていくことになる。

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