5 みんなの大事なおひなさま(下)

その前に月曜日学校に行ったらすぐに、クラスのみんなに約束のご報告をしました。

みんな心配してくれていたし、どういうことかも気になっていたよね。

それにぜひたくさんの人に教えてあげたい、いいことだもん。

張り切ってわたしがお話すると、やっぱり女の子はみんな大喜びです。

「ええっ!?そんな妖精さんがいるんだ」

「家にも、そのポッコロさんの来た日があったんだー」

そうとっても盛り上がりました。

お話するわたしもちょっと得意気で、幸せな気分です。

時々聞かれる正くんからの質問にも、元気に答えます。

「だからね、ちっとも怖いことはなかったの。

それどころかとっても楽しかったよ」

わたしがそうにっこりいうと、みんなほっとしたようでした。

「そうか。良かった」

そう高志くんがほーっと息をつきました。

特に高志くんはそうやってよく気にかけてくれる、優しいお隣さんです。

いつもの感謝の気持ちも込めて、わたしは心配ないよって元気に笑い返しました。

話し終わると、みゆきちゃんがきらきら輝いた顔でいいます。

「さすがみかんちゃんの予想通り、本当に素敵なことだったね。

ひな人形みんなを妖精さんが動かしているなんて、とっても感動的だよ。

そしてわたしが憧れていた妖精が、そんな近くに来ていたんだね」

特にみゆきちゃんは、魔法使いや妖精などが大好きなんです。

だからうれしい気持ちが、誰よりも大きかったみたいだね。

そしてその言葉に、他の女の子達もうなずきます。

「そうだよね。

妖精って、わたし達にとっては幻のような存在だったもんね。

それが実は毎年自分の家に来てくれていたなんて、すごいよ」

美穂ちゃんの言葉に、そうみんなでうんうんといっています。

妖精さんのことはしっかり知っていたわたしも、会ったのは今回が初めてでした。

それに家に来てくれていたことは知らなかったから、びっくりしました。

だからわたしも、みんなと似たような思いです。

やっぱり妖精さんは誰にとっても、会ってみたい素敵な存在なんだね。

そして会ったことはなくても、意外と近くにいるものなんだね。

そんな話をしていると、柾紀くんが残念そうにいいました。

「女の子はいいなあ。

ぼくの家は女の子の姉妹がいなくてひな人形はないから、そんな妖精が来てないってことだもんね。

ぼくも会ってみたいのに」

その言葉にわたしも考えます。

うーん、そうだね。

女の子がいない家には来ないっていうのは、確かに不公平です。

男の子には何かなかったかなあ?

そう考えてみて、思い出しました。

女の子にとってのおひな祭りとそっくりな、子どもの日のことをです。

人差し指を立てて、それをいってみます。

「そうだ!男の子の家には鯉のぼりがあるよね。

もしかしたらそれにも、何か不思議なことがあるかもしれないよ」

わたしは知らなくても、不思議な楽しいことはまだまだたくさんあるというお話でした。

だからそういう他のものにも、きっとね。

そういうと、柾紀くんはわくわくした顔になりました。

「そうかあ。ぼくも探してみようっと」

「何かわかったら、わたしにも教えてね」

わたしはそう付け加えます。

柾紀くんは張り切ってうなずいてくれました。

本当に何かあったらうれしいね。

それに出会うにはまず、大切に思う気持ちが何よりの近道みたいです。

だから柾紀くんが本当に鯉のぼりを大切に思っていたら、見つけられるかもしれません。

そうまた不思議な相談をされたら、みかんはまた張り切っちゃうよ。


そうみーんな解決した今日が、おひな祭りの3月3日です。

こんなに清々しくって、そしてうきうきした気分で迎えられて、とってもうれしいです。

みんなそれぞれのお祝いの仕方があるんだろうね。

真美ちゃん家は、どんなお祝いをするのかなあ?

わたしは昨日お話した通り、お家でお母さんとお祝いします。

今日はわたしのおひなさまとお祝いしたいもんね。

クラスのみんなも、自分のおひなさまと大切に過ごそうって思っているみたいです。

おひなさま達、とっても喜ぶよ。

みんな、いい日になるといいね。

そして明日は、ももちゃんと桜ちゃんのお家でするパーティーに行く約束もしています。

みんなでお祝いするのも楽しいよね。

ももちゃん家のおひなさまは、どうかな?

ひな人形をできるだけ長く出しておいてあげようって、考えているお家だもん。

そのおひなさま達も幸せだと思います。

そんなももちゃんと桜ちゃんのひな人形に会うのも楽しみです。

みんなも、楽しいおひな祭りを過ごしてね。

そしておひなさま達がみんなうれしい気分になれますように。

みかんからのお祈りです。

それからみんながとっても大切に思っているものがあったら、ずっと思い続けていてね。

そうしたらわたしも知らない不思議なことに、あなたが出会えるかもしれないよ。

みんなで、不思議で素敵なことをいっぱい見つけていこうね!


2006年1~7月制作



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ただ今小5の夏のお話を制作中です。

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