4 おひなさまと…(5/5)

そして直し終わった真美ちゃんが満足そうにうなずくと、ポッコロさんさんはいいました。

「じゃあ、オレは帰るな。

そうだ!お嬢ちゃんの名前は?」

そう真美ちゃんを見つめて聞きます。

「真美です」

そうきちんと答えると、ポッコロさんは優しくいいました。

「真美ちゃん、これからも雛人形を大事にな。

オレ達妖精にとっては、人形を大事にしてくれる子がいてくれることが、何よりうれしいんだ」

そうにっこり笑います。

そうだよね。お人形さんの幸せって、持っている人がどれだけ大事に思ってくれているかっていうことが大きいもんね。

わたしもこれからもっともっと、物を大切に思うようにしよう。

今日改めてそう思いました。

ポッコロさんは、そう考えているわたしに向き直ります。

「妖精のお嬢ちゃんは?」

「わたしはみかんです」

そう答えると、ポッコロさんはうなずいて元気にいいました。

「みかんちゃんか。また会うこともあるかもな。

お互い、この仕事をがんばろうぜ」

「はい!」

そう仲間扱いしてもらえたことがうれしくて、わたしは大きくうなずきます。

これからもみんなを助けられるように、わたしもがんばるよ。

そして本当に、またポッコロさんに会えるといいな。

一緒にいると楽しかったし、とってもいい人だよね。

わたしはそう心から思いました。

そのポッコロさんは、目を閉じて腕を組みます。

そして今度はわたし達2人にいいました。

「それにしても、よく小さいお嬢ちゃん達が、こんな時間まで起きていられたもんだ」

真美ちゃんがそれに元気に答えます。

「とっても気になったから、がんばりました。

みかんちゃんにも付き合ってもらえたし」

わたしとポッコロさんの思うことは違うけど、一緒にうなずきます。

わたしも本当にその2つの理由があったから、がんばれたんだよね。

その謎が楽しい理由で、とっても清々しい気分になれました。

そう聞いて、ポッコロさんはわたし達に感心したようでした。

でもわたしに対しては、ちょっと勘違いをしています。

「ふうん。大したもんだ。

2人とも8歳くらいだろ?」

そういわれたわたしは今までの笑顔から、まじめな顔になります。

「わたしは10歳だよ。小さく見えるって、よくいわれるけど」

本当にわたしって、こういっつも本当の歳より小さく思われちゃうんです。

それがなぜなのかはわからないんだけどね。

小さい子扱いされるのが嫌なわけじゃないけど、わたしってそんなに見えないかなあ?

そうわたしはちょっとむくれました。

そんなわたしに、真美ちゃんは困った顔になります。

そしてポッコロさんは慌てて取り直しました。

「いやあ、悪い悪い。

でもいいじゃねえか。歳より若く見えるって。

じゃあさ、オレだっていくつに見える?」

そう質問されて、改めてポッコロさんをよーく見てみます。

おひげもあるし、しっかりとしたおじさんの声だから…。

「40歳くらい?」

そう答えると、ポッコロさんは得意そうにいいました。

「もう80年は生きてるよ」

その返事に、わたしはとっても驚きました。

わたしが答えたのの倍だあ。

「ええっ?そうなの?」

とてもそうは見えません。

普通の人と比べて考えてみると、上に見ても50歳にも見えないよ。

するとポッコロさんは、それが当たり前のことのようにうなずきます。

「妖精って、若く見える方が多いんだぜ。

なんたって周りから愛されるかわいさのあった方が、やりやすい仕事だしな。

だろ?みかんちゃん」

そうおちゃめにウインクします。

そういわれて、わたしもやっと笑ってうなずきました。


うん、そういっているポッコロさんも、動きなどがかわいいです。

わたしもそうかわいくみえていていわれているんだったら、いいんだけどな。

「だからみかんちゃんも、周りからそういわれたら、ほめ言葉だと思いな」

わたしがその言葉にうなずくと、ポッコロさんは安心したようでした。

それからはっとした顔になって、慌てていいます。

「おっと、本当にもう行かなきゃな」

お別れの前に、真美ちゃんが最後に聞きます。

「ポッコロさん、また来年もおひなさま達を動かしに来てくれるんだよね?」

ポッコロさんは笑顔で、大きくうなずきます。

「ああ。絶対に毎年来るぜ。それじゃあな」

その言葉が、この素敵な出来事の最後の記憶でした。

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