2 次へ向かって、みんなで作戦会議(後)

〈日にち〉2月24日(月曜日)

〈お願いしてきた人〉1年2組の真美ちゃん、千枝ちゃん

〈お仕事の内容〉夜に動いているのかもしれないおひなさまを調べる。

〈方法〉3月1日の5時に、真美ちゃんの家に行く。

→夜の12時から、真美ちゃんと2人でおひなさまをこっそり見守る。

「何を書いてるの?」

お昼休みにノートを書いていたわたしは、前の席の麻緒ちゃんに声をかけられました。

でもわたしが答える前に、後ろのももちゃんに当てられました。

「わかった!いつも付けてるお仕事ノートでしょ」

そう聞いて麻緒ちゃんは納得しました。

「そっか。昨日相談されてたもんね」

わたしはうなずきます。

「うん。どんなお仕事をしたか、ちゃんと書いておかないとね」

お泊まり会ができるって朝にきいたので、今回もそろそろ書き始めることにしたのです。

そんなわたしに、桜ちゃんがほーっと息をつきました。

「みかんちゃんって、結構まめだよね。ノートは何ページいったの?」

そう聞かれたので、わたしは今までのノートの枚数を数えてみました。

でも最初の方だからすぐ終わったよ。

「3年生になった時から書いてるんだけど、このノートが2冊目で、今5ページ目だよ」

そういうと、周りにいたみんなに驚かれました。

「うわー。すごくたくさん」

「1つの出来事に1ページ使ってるんだったよね。

…ということは、1ヶ月に3件くらいってことだね」

そう秋子ちゃんが素早く計算までするので、わたしは手を振っていいました。

「わたしにはできなかったお願いも書いているから、たくさんになってるんだよ」

そう、わたしの使える魔法が少ないからできなかったことや、魔法使いにもできないお願いもたくさんありました。

でもわたしは一応全部書いています。

たまにこのノートを見て、今度同じことをお願いされた時にできることはないか考えています。

お勉強すればできそうなことは、できるだけ頑張って力になりたいもんね。

そのおかげで役に立ったことも、少しはあるんだよ。

「今回は、どんな内容だったんですか?」

正くんがいつものようにノートを持って聞きます。

魔法使いがどういうお仕事をするのか、とっても興味があるそうです。

だから、お願いした人が秘密っていった時や、わたしが他の人にはいわない方がいいんじゃないかなって思ったこと以外は話しています。

今回のは真美ちゃんの悩みっていうよりも、不思議なお話だからいってもいいよね。

わたしはそう思って、みんなに話すことにしました。

「毎朝おひなさまを見た時に、昨日よりも少し動いているんだって。

だから夜に動いているのかもって、調べることになったんだよ」

そういうと、やっぱりみんな驚きました。

「とってもおもしろそうな話」

柾紀くんがそう笑顔でいったのを最初に、女の子達も張り切ります。

「本当におひなさまが動いていたら感動するねー」

でも温広くんは逆に、まじめな顔でいいました。

「それってあぶなくないか?

人形が動くって、いい理由よりも…、たたりだったりとかさー」

その言葉で、一気にみんな暗ーい顔になりました。

「たしかに…」

龍太郎くんも、そう左手をあごにやってうなずきます。

すると彩ちゃんがわたしの手を取りました。

「みかんちゃん、大丈夫?」

そうみんながまじめに心配してくれたけど、わたしは自信を持って答えました。

「大丈夫!そういうのじゃないよ。だったら見た時わかるはずだもん」

そんな怖いことじゃないって、不思議と信じられます。

そう笑顔でいられるわたしに、正くんが質問しました。

「じゃあ、みかんさんはどう思っているんですか?」

そこでわたしは、昨日少し考えてみたことをいってみます。

「お人形自体は普通で、自分で動いているんじゃないと思うの。

だからおひなさまを動かしている、何かがあるのかなあ?」

それが何かはまだわからないんだけどね。

でもその答えに、正くん達みんなは満足したみたいです。

「そうですか、なるほど。ではわかったら教えてくださいね」

正くんがノートを閉じていいました。

「その何かが素敵なものだといいなあ」

そう瞳をきらきらさせていう、みゆきちゃんの言葉にうなずきます。

「うん、そうだね。きっといいものだよ」

そう話がまとまると、今度は高志くんに聞かれました。

「そういえば、さっき夜に調べるとかいってなかったか?」

「うん」

わたしがうなずくと、途端にまたみんなに心配されました。

「夜って8時くらい?」

優香里ちゃんの言葉に、光くんが答えます。

「いや、いくら何でもそんなに早くないんじゃない?」

「そうそう。なんたってみんなが知らない間だし…」

港くんがそういった後に、みんながわたしをじーっと注目します。

わたしはちょっと気が引けたけど答えました。

「夜の12時からなの…」

すると思った通り、みんなに騒がれました。

「夜の12時…って、おれ達だってきつい時間だぞ!?

夏の学校宿泊会の時、自分が何時に寝たか覚えてるか?」

そう健治くんにいわれて、半年前の宿泊会のことを思い出しました。

雪湖小学校は夏に、3・4年生は学校で、5・6年生になったら遠くまで連れて行ってもらって、お泊まり会があるんだよ。

たしかこの前は、昼間元気にはしゃいで疲れちゃったから、すぐ寝ちゃったんだっけ。

あれって何時だったのかな?

わたしが思い出せないでいると、健治くんが強くいいました。

「8時30分だぞ、8時30分!

みかんと、麻緒と、柾紀と、港は、夜更かしなんてぜーったい無理!」

そう早く眠ったらしいみんなまでおまけに指を指されて、力説されてしまいました。

えへへへへ。わたしは仕方なく、とりあえずごまかし笑い。

健治くんのいう通り、12時まで起きているなんてわたしには無理です。

でもそれももちろん考えてあるんだよ。

わたしは人差し指を立てて、そのことを付け加えます。

「ちゃんと考えてあるよ。

土曜日の5時からだから、学校が終わってから3時間眠っていけるでしょ。

それから真美ちゃんの家に行っても、時間まではできるだけ寝ることになってるもん」

昨日しっかり真美ちゃん達と、そう眠る時間のことまで決めておきました。

今回はお仕事のために行くので、遊ぶよりもお仕事を成功させるための計画を立ててあります。

わたしがそう説明すると、龍太郎くんがうなずいてくれました。

「なら、大丈夫なんじゃないか?前もって寝てるんなら安心だよ」

みんなも納得してくれたようです。

「でもみかんは夜弱いんだから、あんまり無理するなよ」

そう最後に注意してくれた高志くんに、わたしはうなずいていいました。

「うん、そうだね。気を付けるよ。

でも楽しそうなお話だし、できるだけがんばってくるね!」

そう元気に答えてから、みんなに向き直っていいます。

「何でだったのか、みんなに報告するからね」

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