拗らされたら終わり

乾禄佳

第1話 異能力の発現

 ”速報です。従業員の女性の自宅に不法侵入した男二人が逮捕されました。二人は容疑を否認しており、彼女が住所を自分たちに教えてくれたと供述しており警察は調べを進めております


「いやー、最近多いですね〜。どの被害女性から話を聞いても教えてないって皆さん言うんですよね。不思議な事件が多いですが、ここで犯罪心理学に詳しい専門家に聞いてみましょう」

「▲▲大学の伊波いなみです。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。え〜、最近不可解な事件が多いじゃないですか。それはどうしてなのでしょうか」

「今回のような事件は恐らく男性側がなんらかの進化を遂げている可能性が考えあられます。名前をつけるなら異能力とても言いましょうか...」

「異能力ですか...。同じ男ですが私は奥さんの居場所なんて全然わからないですけどね」

「それがですね。使える力は人によって違うみたいなんです。あと一つ共通点がありまして」

「共通点ですか...」

「それは


      恋を拗らせている


               事です」”


 テレビから流れるニュースを見ながら被害者女性と同じ接客業をしている高橋たかはし 杏里沙ありさは恐怖を感じた。勝手に好意を寄せられた挙句付け回され逮捕されれば女性の方が悪いと言われる理不尽さに明日は我が身になってしまうんではないかと恐怖した


「ただいま。ん?ニュース?」

「そう。最近、不法侵入とかストーカーとか多いじゃん?それって異能力なんだって」

「異能力?」

「そうそう。なんか相手の場所がわかるんだって」

「へぇー」

「自分が標的になる可能性がないからって!やばいんだよ?恋拗らせると能力使えるようになってストーカーになるんだって、怖くない?」

「怖いなぁ〜。あ〜怖い怖い(棒)」

「うわぁー、棒読み」


 先ほど帰って来た彼は、加藤かとう さとる。幼馴染で東京の同じ大学に通うため二人で上京して来て同居している。

 杏里沙は東京で一人暮らしする予定だったが、幼馴染の聡も東京の大学しかも同じ学校に通うことを親が知りルームシェアになった。結果的には家賃は割り勘で一人暮らしするより大きくて防犯設備が整っている所に住めたので結果的には感謝してる


「ご飯食べてきた?」

「まだだけど」

「多く作り過ぎちゃって......食べる?」

「料理に自信ないから手料理は振る舞わないって言ってたのは誰だっけなぁ〜」

「今日は自信作なの!」


 一緒に住むときに食事は各々で準備すると決めていたので聡の反応もわかるが、弁当を買ったり各々で料理をすると光熱費も高くなり食材も余って腐ってしまうこともある。だから、杏里沙は少しずつ練習をしてまともな味とほどほどの見た目に盛り付けられるようになるまで絶対に食べさせたくはなかった。でも、今日やっと家庭料理と呼んでもいいものが出来たので反応を見るために聞いてみた。


「まだ練習中だから美味しくなかったら残してね」

「バイト終わって腹減ってるから。それに、帰って来てご飯が出来てるのは嬉しいな」


 不安を和らげる言い方をする聡に杏里沙は安心して配膳できた


「お待たせ。出来たよ」

「おぉ、自信ないとか言うからどれだけ酷いのが出てくるのかと思えば美味しそうじゃん」

「本当!?やっった!」


 第一声何を言われるかとビクビクしていたが、思ったより優しい言葉をかけられ嬉しくなり部屋に行かず一緒に食べることにした。


「自信ないとか疑いたくなるくらい美味しいよ」

「やった!」

「それより、もうすぐ大学も卒業だろ?就職どうするか決めたか?」

「アパレル系に行こうと思ってたんだけど...こんなご時世で接客行くの怖いからどうしようかなって」

「異能力か...。でも、あれって独身女性しか被害者いないよな〜」

「確かに!じゃあ、相手探さなきゃかー」


 杏里沙がため息まじりに言うと聡は驚いたように目を見開き俺は?と言うように自身を指さした。


「いや、流石に身近過ぎない?」

「何言ってるんだよ。こうして、何年もルームシェアしてるし性格だって小さい頃から知ってるからなんも問題ないだろ」

「いや〜、そうじゃなくて恋愛とかそういう風に見れないっていうか...」

「気恥ずかしいそれともどう接したらいいかわからないか?」


 今言おうとしていたことを当てられ目を見開く


「なんでわかるの?!」

「そりゃわかるだろ。お前顔に出やすいし」

「え...マジ」

「そ、マジ」


 マジかと顔を覆い見上げる。ただ、聡がいうことも一理あって性格がわかっている分気を使わなくていいという面はいいが、杏里沙のイメージする恋人との関係を聡とするとなる恥ずかしく頷くことが出来なかった


「わかった。こうしよう!」

「え.....やな予感しかしないんだけど..」

「卒業まで後、半年ある。だから、3ヶ月俺とお試しでいいから付き合って欲しい。それでも、気持ちが変わらなけれなければ俺はこの家を出て行く」

「出てくの?!」

「当たり前だろ。これから彼氏探すやつが他の男と同棲してるなんてアウトだろ」


 言われてみればそうかもしれない。そう思う杏里沙は今まで彼氏が出来たことがなく恋愛には疎いため言われてから今の状況が普通ではない事に気がついた。


「どうする?」


 杏里沙は迷っていた。今のままの関係が心地よくてそれを崩したくはないという気持ちとこれから誰か相手を探すにしてもこの関係は続けられないこと。だからといって聡と付き合うことも考えられずに答えを出すことが出来なかった


「流石に今すぐに決めろとは言わねぇよ。あまり長くなると考えられないだろから二週間でどうだ?」

「二週間...」

「二週間後に答え聞くからその時に答えを言ってくれ」


 頷くことは出来なかった杏里沙の中ではある思いが渦巻いていた。このまま聡との関係を続けて行くかそれともまだ見ぬ彼氏のために関係をたつのか。そう考えた時に言い知れぬ寂しさが杏里沙の心を覆った

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