第6話 ただのガイアス
帝国グアド・グランでにはナトラという少女が囚われている。
友人レミィを助けるために、身知らぬ地へ渡った僕は、その少女の事を放っておく事が出来なかった。
と、いうのも、現地で様々な人に助けられたからだ。
帝国の人達は、旅人だといった僕によくしてくれた。
奇策な踊り子の女性に、情報通の警備兵の男性、研究が好きな白衣の女性などなど。
だから、彼等のために何かしたいと考えていたのだ。
彼等の知り合いであるナトラという少女が帝国の地下に囚われていると知った僕は、友人のレミィの事が心配でありつつも、救出に動く事にした。
ナトラは、生物兵器を完成させるためのパーツとして扱われている。
非道な実験にさらされているらしく、体力がつきかけているらしい。
そのため、早く助けなければならなかった。
ナトラは、魔人の魔力を高める事ができるという特殊な力を持っている。
そのせいで、目をつけられてしまったのだろう。
けれど、幸いな事に彼女を助けた事で、レミィの情報も手に入った。
レミィも同じ力を持っていた関係で、狙われているようだったからだ。
僕はすぐさま、アイナと連絡を取る事にした。
しかし、アイナとの合流予定地点に彼女があらわれる事はなかった。
残されたのは、ネコにくくりつけらた手紙だけ。
その手紙から顚末を知った僕は、一週間くらい落ち込んで友人知人に心配をかけたと思う。あまりよく覚えてはいないが。
けれど、立ち止まるわけにはいかないと、思って行動に出た。
アイナの、彼女の願いと期待を背負って歩かなければ。
だから僕は、薬師の元で怪我の療養をしていたコニーと合流し、罪の意識に苛まれるレナシスから情報をもらい、帝国でできた友人・知人達に頼もしい援軍になってみらって、ライトの元へ乗り込んだ。
広く顔が聞く存在……踊り子である女性や警備兵の男性に避難誘導を任せ、研究員の女性には万が一の時のグアドの倒し方を考えてもらい、薬師の男性には怪我をしているかもしれないレミィの治療を頼み、コニーやレンからの情報を参考にしながらライトを捜索。
ほどなくして彼は見つかった。
手はず通り戦闘地域から民間人を避難させた後、対峙する。
「返せって? するわけないだろ。こいつらはもう僕の、大切な戦利品なんだから」
話し合いにならなかったためライトとは、すぐに戦闘になった。
相手のほうが強くて、かなり苦戦した。
主人公だから、当然かもしれない。
しかし、僕は一人じゃない、それに、味方もいる。
縁をつなぐことも、イベントに立ち会う事も、主人公だけの特権じゃない。
苦労はするけれど、同じことは誰にだってできるのだから。
途中からは僕たちがをおし始めていた、けれど状況は変わった。
ライトはレミィやアイナを操って僕達を戦わせてきたのだ。
僕達は手だしができずに苦しむしかない。
けれど、諦めずに僕は二人に必死でよびかけた。
そのかいもあってか、二人が一瞬だけ動きをとめたので、その隙を見逃さなかった。
二人を無力化して、ライトと改めて戦いを始めた。
「主人公」であるライトは信じられないようだった。
「どうして端役にすぎないお前達がここまでしぶといんだ!」とか「お前達なんて僕の経験値になる運命でしかないのに!」叫び出している。
彼は「主人公」の立場を奪った。
けれどそれは、上辺だけの強さ。
彼は、「人としての強さを得る」ことをおろそかにしていたのだろう。
はりぼての力は、いざという時に役に立ってくれる存在ではないのだ。
ライトは次第に追い詰められていった。
それで、彼の洗脳がとけたのだろう。
アイナとレミィが立ち上がって、反旗を翻した。
満身創痍になったライトは「そんな馬鹿な」という愕然とした表情で僕達を見つめている。
「たかがゲームのキャラクターにやられるはずがない。こんなの信じない」
「僕達はキャラクターなんかじゃない、人間だよ」
最後に僕は、そう言ってとどめを刺した。
長い戦いはようやく終わった。
あの血の惨劇からずっと続いていた僕達の戦いが。
僕はかつて、ただの人ですらなかった。
誰かの代わり、よく似た人間の代わりに存在を許されているだけの人間だった。
だから、そんな僕が主人公と出会ったときには、それはもう複雑な気持ちになったよ。
「魔王を倒すたびにはあなたの力が必要なの。これからよろしくね」
けれど、「主人公」を嫌う人の姿を見て、「主人公」だから救えない人を見た結果、色々あって自分は自分でしかないと知ったから。
「何でもできる勇者さまに、弱い村人の気持なんか分かるわけがない」
「死にたくない。けれど、敵である勇者になんて、助けてほしくないわ」
きっと自分だから、できることがたくさんあるんだって気付いたんだ。
主人公がゲームファンタジー世界でヒロインを救う話 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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